野中会長定例記者会見

平成24年03月15日

1年を振り返り

信託協会長の野中です。昨年4月の会長就任からまもなく1年になります。これまでの皆様のご支援に対して、心より御礼を申し上げたいと思います。

本日が会長としての最後の会見となりますので、この1年の取り組みについて、個人的な感想を含めてお話したいと思います。

今年度は、ひとことでいえば、やはり東日本大震災への対応に取り組んだ1年だったと思います。震災直後には、社員会社各社にて預金事務の特別措置や休日営業などを行うとともに、協会としても社員会社各社の相談・照会窓口を周知するなど、金融経済の安定のための対応を実施しました。夏以降は、復旧・復興に向けた動きがみられるなか、民間の力を活用した復興支援策の一つとして、土地信託を公共施設等の復旧に役立てていただくために、税制及び規制緩和についての要望活動を行ってきました。その結果、昨年末の政府の税制改正大綱に、地方自治体を委託者とする土地信託に係る減税措置を一部認めていただきました。また、規制緩和では、土地信託が公共施設整備を主目的として使えるよう、総務省との間で議論を尽くしてまいりました。現在、総務省にて鋭意検討をいただいております。
 来年度以降、復興に向けた動きが本格化していくことと思いますが、こういった措置がなされることにより、信託業界として、より一層の貢献ができるのでないかと考えており、大変意義の大きい取り組みを行うことができました。

一方、社会全体に目を向けますと、寄附に対する高い関心や、安全確実な財産管理制度の必要性が再認識された1年でもありました。こういった皆様からの声に対し、業界をあげて新たな商品サービスの開発に力をいれた結果、社員会社各社において、寄附者と寄附先を繋ぐスキームである特定寄附信託を順次取り扱い開始するとともに、後見制度をバックアップするための仕組みである後見制度支援信託についても取り扱いを開始しました。
 このように、社会の要請に対応した適切な商品サービスの提供の実現についても、着実な成果を出すことができました。
 これまでとは違った分野の方々からも、信託制度の活用が注目されはじめているように感じています。信託にはまだまだ大きな可能性が秘められていることを、改めて実感した1年でした。

また、今年は3月31日に適格退職年金制度の廃止期限を迎えることになっています。他の年金制度等への円滑な移行に向けて、業界をあげて取り組み、社員会社各社においてきめ細かくフォローを行いました。その結果、信託銀行が総幹事となっている全ての制度が移行を完了できる見込みであり、地道な活動でしたが、計画的な移行を着実に支援しました。
 年金制度については、現在、AIJ投資顧問によるいわゆる年金消失問題が大きな社会問題となっています。証券取引等監視委員会にて調査中と聞いており、事実関係の解明が待たれるところですが、信託業界としても、今後解明されていく事実関係に基づいて、他のスキーム関係者や関係当局と協議しつつこの問題に取り組んでいく必要があると考えています。本件に関して、業界としてなにができるのか、そのために必要な制度は何か、などについて検討をはじめたところです。

会長就任以降、私は一貫して、信託を国民に身近なものにしていく、そのために努力していきたい、ということを言ってきました。先ほど述べたような活動をとおして、信託という仕組みや機能が広く理解され、わずかではありますが、皆様に信託を身近に感じてもらえるような取り組みができたのではないかと考えており、意義ある一歩を踏み出せたと考えています。
 この間の当協会の活動に関係する全ての皆様のご尽力及びご協力に、あらためて感謝したいと思います。

最後になりますが、4月以降、会長会社の務めは三井住友トラストホールディングスに引き継ぐことになります。今後とも、当協会の活動に対して、より一層のご理解、ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

以下、質疑応答

震災復興に対する取り組みについて

問:
 この1年を振り返り、貢献できた点、これからの課題について改めて伺いたい。
答:
 公共施設を主目的とする土地信託について、税制及び規制緩和についての要望活動を行い、税制面におきましては、先ほど申しましたとおり、税制改正大綱に織り込まれました。また、規制緩和については、最終的な結論は出ていませんが、総務省には一定の理解をいただいておりますので、一日も早く私どもが期待するような結論を導き出していただくことを期待しています。

景気動向について

問:
 最近の景気認識と世界経済動向をどのように見ているか。
答:
 米国は指数的にはボトムを打っているように思いますが、実態の消費行動などを見ても、まだまだ一安心というわけにはいかないと思っています。また、欧州においてもギリシャ債務問題をはじめクリアになっているとは思えません。欧州金融機関のリスクアセット削減等の問題があるといったことを考えると、世界経済が順調に右肩上がりになっていくことにはならないだろうと思います。
 日本においても、金融当局の施策等でドル・円が円安方向に向かっており、輸出企業も一息ついているということで、日経平均も1万円を回復したということだと思います。したがって、日本のマーケット環境を考えた場合、ボトムは打ったような気はしますが、再び日経平均1万円割れ、ないしは、ドル・円がもう少し円高にいくことにもなりかねないので、予断は許さないのではないかと思います。

AIJ関連について

問:
 AIJの問題についてどう受け止めているか。また、ワーキンググループを立ち上げていると思うが、再発防止に向けたチェック機能の強化について伺いたい。
答:
 AIJの問題につきましては、大変遺憾ですし、委託者である基金の苦しみはいかばかりかと思っています。年金に関する信託は、大きく分けて信託銀行の裁量で運用する年金信託と投資顧問会社を運用代理人とし、信託銀行は事務受託を行う年金特定信託の二つがあります。
 年金特定信託において、委託者は投資顧問会社と投資一任契約を締結し、信託銀行と年金特定信託契約を結ぶことになりますが、信託銀行はそういった要請に対し、正当な理由がない限りこれを拒否してはならないと決められています。AIJの問題は、この年金特定信託の受託業務ということで整理する必要があります。
 今後の対応という観点においては、信託協会にワーキンググループを設置しました。受託者である信託銀行としてできること、委託者にとって有効な手段というのはどういうことがあるのかを実現可能性を含めて、当局等関係者と議論していきたいと思います。
問:
 AIJの問題において、年金特定信託の受託業務において、信託銀行は見抜くことはできなかったのか。
答:
 見抜くことは不可能であったと思います。
問:
 今後、第二、第三のAIJが出るのではないかと言われているが、今の仕組みだと見抜けないということか。
答:
 現状の仕組みだと信託銀行の立場で見抜くことは困難だと思います。
問:
 昨日の参考人質疑を見ると、被害にあった基金は、信託銀行からの報告書は疑う余地がなかったと発言し、信託銀行に対する期待度は高いと考える向きがあったと思う。このような中、民主党などで検討されている残高のチェック等の実現可能性やどのような制度改正が必要か伺いたい。
答:
 投資顧問会社が運用する外国籍投信において、信託銀行が時価情報を取得する際、アドミニストレーターからの情報をベースに行っています。結果的にこの仕組みが公正時価を確認していく過程の中で、非常に大きな壁となります。外国の法制度にかかわる話であり国内だけの議論で変えていくことは大変難しいと思いますが、基金からプラスアルファの要請があった場合にどう整理していくのか、何か良い方法がないかなどを模索できれば良いと思います。
問:
 今の仕組みの中で見抜くのは不可能だったと言っていたが、例えば、基金の総幹事になっている場合に、資産の中身がある程度見えると思うが、あまりにも偏った運用をしている基金に注意を促すといったことも含めて、実現の可能性が難しかったということか。また、今後、仕組みを変えずに業界としてチェック機能を強化するとすれば、どういうことが考えられるか。
答:
 総幹事の位置付けですが、総幹事は基金全体のアセットアロケーションがどうなっているかを知り得る立場ではありません。総幹事で最も大事な業務は、年金給付事務を間違いなくやっていくということです。総幹事業務を行っていることと基金全体のアセットアロケーションを把握できることは、繋がっているものではありません。したがって、一つの運用機関に過度に傾斜している基金に注意を促すというようなことは、今の総幹事業務においてはできません。仮に、信託銀行がそういった機能を新しく担うということであれば、契約形態や制度を変えなくてはならないということだと思います。
問:
 どのように変えれば、信託業界としてチェック機能を強化できるというビジョンはあるか。
答:
 ワーキンググループでは二つの立場で整理しています。先ほど申しましたように、信託銀行には年金信託の受託者としての立場、もう一つは、年金特定信託の受託者としての立場があります。この二つの立場で、今後このようなことを未然に防止するために、信託銀行がどういう役割を担えるかということを検討しているところです。
問:
 今回のスキームだと見抜くことは不可能だったということだが、一方で、信託銀行に対して期待が非常に大きかったというのも事実だと思う。今回の問題における信託銀行としての責任をどう捉えているか。
答:
 この問題については、全貌が解明されないと信託銀行の責務が法的にどうなのかということは何とも言い難いと思います。現状において、信託銀行が確認している段階では、契約における瑕疵はなかったのではないかと理解していますが、これは非常に微妙な問題ですので、全貌が解明されたところでお答えする方が良いと思います。
問:
 正確な時価の把握といった部分で、今後、規制強化という形で信託銀行に責務を負わせようという議論が出てくる可能性もあると思う。そのような規制強化の動きに対しての会長の見解はどうか伺いたい。
答:
 規制強化というよりは、年金特定信託の受託者として行っている今までの業務にプラスアルファをすることで、基金がもっと安心して投資顧問会社に投資一任勘定で委託できる環境を作り出すことが重要だと思います。
問:
 そのアプローチとして、法的に縛っていくやり方と自主的なアプローチというやり方があると思うがどうか。
答:
 個人的な見解ですが、法的に縛るのは良くないのではないかと思います。信託銀行はビジネスとして年金特定信託の業務を営んでいるので、その商品性を高めていくというあり方のほうが良いのではないかと思います。
問:
 厚生労働省で、投資配分の見直しをして数値的な目安を定めようといった議論がなされているが、規制強化についてどのように考えているか。
答:
 厚生労働省で規制強化の動きがあるといったことは、報道で承知しているだけでありまして、どう考えているかといったことは知りません。よって、コメントのしようがありませんが、要するに問題は、第二のAIJを出さない、そのような問題が起きないようにするということが大事だと思うので、これから色々な議論がなされるのではないかと思います。
問:
 運用に数値的な制約を設定することについての反対意見はないか。
答:
 運用のアセットアロケーションをどのようにすべきかというのは、一義的には基金が考えることだと思います。基金が元々抱えている問題、すなわち、予定利率の問題、国の代行部分の問題等もあると思います。基金のアセットアロケーションをどうしていくかということだけで議論するというのはあまり得策ではなく、そのようなこととあわせて考えていく必要があると思います。
問:
 問題の全貌や規制強化のあり方というのが示されない限り、信託協会としてどのような対策をとるかについて、今の時点では言えないということか。
答:
 同時並行的に進めるべきだと思います。全貌が明らかになるまで手をこまねいていてはいけないわけですし、そのためにも早々とワーキンググループを立ち上げたということであります。関係者が協議をしながら基金にとって有効な制度になるようにしていかなければならないので、基本的にはそれを待ってというつもりはありません。
問:
 いつまでにその成果物をまとめようと考えているか。
答:
 できれば、一定の課題の頭出しくらいは3月を目処にできれば良いと思いますが、今回のAIJ問題のスキームも徐々に明らかになっていくと思いますので、その状況に応じて手直し等を行っていくことになると思います。

以上

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