北村会長就任記者会見

平成24年04月04日

冒頭、上野専務理事より、本日開催された理事会において、信託協会の新会長に三井住友トラスト・ホールディングス 北村邦太郎取締役社長を互選し、就任した旨、また、新一般委員長に三井住友トラスト・ホールディングス 白山昭彦常務執行役員が就任した旨の紹介を行った。

続いて、第87回信託大会を4月16日(月)午後3時から経団連会館にて開催し、金融担当大臣と日銀総裁にご挨拶をお願いしているほか、東京大学の中里教授に「経済社会の変化に対応した信託税制の構築に向けて」と題する講演をしていただくことになっているので、記者クラブの方々にも是非出席いただきたい旨案内を行った。

また、平成24年度の信託研究奨励金の募集を開始したことについて説明を行った。

会長就任の抱負

このたび、信託協会会長に就任いたしました北村でございます。これから1年間よろしくお願いします。就任にあたりまして若干の抱負を申し述べたいと思いますが、その前に個社として、皆様に申し上げます。

先般の旧中央三井アセット信託銀行のインサイダー取引規制違反に続き、一昨日のATMを利用した取引の一部不具合が発生いたしました。お客様をはじめとした関係者の皆様に多大なご迷惑とご心配をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。このような事態が発生しないよう再発防止に全力を尽くし、一日も早い信頼の回復に努めてまいりますので、引き続きのご支援のほどお願い申し上げます。

さて、信託協会会長としての抱負でございますが、第一には、「信託機能の一層の活用による経済・社会への貢献」を図っていきたい、ということでございます。
 昨年3月の大震災発生以降、被災者支援のため多額の寄附が全国より寄せられ、わが国における寄附文化の定着、拡大の兆しが感じられます。信託業界では、このように世の中で高まりつつある寄附に対するニーズに応えるため、公益法人等への寄附を仲介する特定寄附信託を本年より開始いたしました。
 また、信託の財産管理機能を活用し、後見制度をご本人の財産管理面でサポートさせて頂く後見制度支援信託につきましても、本年2月より取扱いを開始いたしました。
 信託業界では、今後とも、少子高齢化、世代間扶養等、さまざまな社会的課題に対応し、わが国の社会、経済に貢献できる新たなサービスや商品の開発、ご提供に努めて参りたいと存じます。

続きまして、抱負の第二として申し上げたいことは、「信託への期待に応え、健全かつ着実な発展」に努めて参りたい、ということでございます。
 大震災を経験して、「繋がり」「絆」「支えあい」の大切さが再認識されておりますが、信頼の絆を原点に置く信託制度に対する期待は、従来以上に高まっていると考えております。
 信託は受託者に対する高い信頼を前提とし、受託者は高度な専門性を発揮することが求められておりますが、お客様本位の姿勢と社会への貢献など、今こそ、信託の力が求められていると認識しております。
 本年度は、これまでの活動成果に加え、新たなニーズを反映した規制改革や税制改正に関する要望等、信託制度の利便性向上と健全かつ着実な発展に向けて、一層注力して参る所存であります。
 そして、益々わが国との関係が深まっているアジア諸国と信託制度の相互理解に向けた研究を継続するとともに、中国をはじめとするアジア諸国の信託協会や関係団体との交流を推進して参ります。

以上、信託協会長としての抱負を申し述べさせていただきました。
 引き続き、信託協会の活動につきまして、ご理解、ご支援をいただきますようお願い申し上げます。

以下、質疑応答

今年度の取り組みについて

問:
 この1年で特に取り組みたいこと、もしくはサービス・商品等がありましたらお聞かせ下さい。
答:
 具体的には、税制改正につきまして2点、規制改革につきまして1点の要望を検討しています。税制改正要望については、現在、協会内で議論を行っている状況ではありますけれど、今年度は、1つ目は教育資金贈与信託の創設、2つ目は特別障害者扶養信託、これは、特定贈与信託とも言いますけれども、この見直しをしていくことを検討しています。
 教育資金贈与信託とは、信託機能を活用した子や孫への将来の教育資金の贈与について、贈与税の課税繰り延べ措置を講じるというものです。1,400兆円とも言われる個人金融資産の約6割を保有している60歳以上の高齢者世代の資産を教育資金に活用できれば、子育て世代における経済的負担が軽減され、消費拡大や経済活性化、そして、少子化対策にもつながっていくのではないかと考えています。
 2つ目の特別障害者扶養信託の見直しですが、まず、特別障害者扶養信託とは、特別障害者の経済的な安定を図る目的で、個人が特別障害者を受益者として、金銭、有価証券等の財産を信託した場合に6,000万円を限度に贈与税が非課税となる制度でございます。この信託は、昭和50年に創設されましたが、それ以来、抜本的な見直しが行われておらず、利用者も特別障害者に限定されていることから、今のところ、一般障害者と特別障害者の双方を対象とすること、贈与税の非課税限度額を増額することなどを要望として掲げることを検討しています。
 なお、わが国では、平成18年2月に国連総会で採択された障害者権利条約の批准を目指して、国内法の整備が進められており、最近では、障害者を総合的かつ計画的に支援するための障害者総合支援法が国会に提出されているところでございます。このような環境下、これらの障害者施策を側面から支援する要望であると考えています。
 次に規制改革に関する要望ですが、現行の投資信託法においては、受託者は投信委託会社から運用委託を受けることができないため、投信委託会社からの個別指図がなければ、債券レポや貸株を行うことができず、結果的に収益機会を失っていると考えていまして、信託協会では投信委託会社から運用委託を受けて、受託者が運用のノウハウを活かして、自らの裁量で機動的にレポや貸株を行うことができるようにすることを要望することを検討しています。
 本件は現在、金融審議会投信ワーキンググループが開催されているところであり、この中で議論して改正していただきたいと考えております。

不動産市況について

問:
 不動産市況についてどのように見ているか。
答:
 不動産市況についてですけれども、東京を含む主要都市全般において、オフィス賃貸市場は、未だ精彩を欠いているという状況と見ています。東京のオフィスの空室率は今年後半まで回復は期待しづらいと見ています。地方都市においては、10%を超える高い空室率がまだ続く見通しです。賃料も東京を含めて総じて軟調な推移が続いております。一方で、住宅の市況を申し上げますと、首都圏では分譲マンション市場が活性化し始めておりまして、近畿圏では中古住宅の成約件数が前年比増加のトレンドにあります。総じて住宅需要は底固く、この先も比較的安定的に推移するのではないかと思われます。第二団塊の世代の取得ニーズは、まだ半分程度しか消化されていないということも言われていますので、住宅については、底固いのではないかと考えています。
 一方でJリートを見ますと、投資口の価格は昨年11月末から今年の1月中旬頃までに底を打って、序々に回復ということだと思います。12月に一旦途切れた公募増資も1、2月ともコンスタントに実施されているところです。Jリート投資口の価格の更なる上昇を楽観視できる状況ではないと思いますが、Jリートによる収益不動産の取得が息切れする懸念は、一頃より大きく後退していると見ています。
 なお、足元では、Jリートの新規上場が1つ予定されているということで、これは、2007年10月以来のことという状況です。
 欧州債務危機問題が、長期化するということで、金融市場、実体経済の双方を通じて不動産市場、とりわけ、オフィスとか、商業施設の賃貸需要回復の足かせとなるということは、ある程度避けられないと見ていますけれど、一方でJリートの投資口価格が最安値から反転したということで、Jリートの公募増資に対する姿勢がこれまでより、一段と前向きになるだろうと期待しています。

AIJについて

問:
 AIJの問題について、信託銀行の役割が議論になっていると思います。ワーキンググループを作って、再発防止策を検討していると思いますが、現在の進捗状況について伺いたい。
答:
 この問題については、信託協会で議論を行って課題の頭出しは終わっているという状況です。再発を防ぐために信託として何ができるのかということについて議論を始めたところです。この問題は、信託業界だけで解決できる問題ではなく、厚生労働省、金融庁をはじめとした関係者とよく相談しながら進めていく必要があると思っていますので、協会として先んじて何か公表するということはないと考えています。今、協会で検討している主な論点ということについて、お話させていただきます。
 第1に基金が複雑な運用スキームを正しく理解しているかという問題があるので、この運用スキームについて、運用者から基金に対して十分な説明が行われているかどうかを特金の受託者が確認することで、基金のお役に立てないかということを検討しています。その前提として、特金の受託者がどういうことを確認するのかを、厚生労働省のガイドラインなどで明確化するということが考えられます。
 具体的にどのような確認項目にするかについては、信託としてもいろいろと知恵を絞っていきたいと思っていますが、例えば、今回の問題を踏まえると、外国籍私募投信に投資するスキームの場合、時価情報を誰が算定し、どのような経路で基金に届くか、あるいは関係者の相互の関係はどうなっているか、外部監査はあるか、監査報告書を入手することは可能かというようなことを確認すべきではないかと思います。
 なお、外部監査によるチェックについては、本日の国会でも議論になっていたことを承知しています。信託協会としては、外部監査報告書を入手できなかったことなどの課題を踏まえて、再発防止に資する実効的な方策を講じるために関係者とよく相談をしながら、調査・検討を行っていきたいと思います。
 第2に今回の問題では、投資先の外国籍私募投信の名義人が、証券会社になっていたので、特金受託者が海外のファンド受託銀行などに直接報告を求めることができなかったという面があります。信託銀行名義にしておけば、悪意を持った人に対して、一定の抑止効果があるのではないかと思われます。そこで、外国籍私募投信に投資するスキームを構築する際には、原則として、私募投信の名義人を特金の受託者にするよう、例えば厚生労働省のガイドラインでの明確化などの対応が考えられるのではないかと思います。
 以上が検討中の内容の一部であります。まだ、検討案のたたき台であり、今後、関係者とよく相談をしながら検討を進めていきたいと思っています。
問:
 昨日のAIJの参考人招致の中で、詐欺を認めなかったが、北村さんとしては、詐欺をやったと思うか。
答:
 信託協会としてどう認定するかということを申し上げるのは難しいと思うので、個人的な見解ということになりますが、詐欺の構成要件を満たしているかどうかについて、現状はっきりしているかどうか明確に承知していないので、私の立場でこれを詐欺だと断定するのは難しいと考えます。心証的には、そういうことではないかと思いますが、これは断定的判断をするものではありません。
問:
 先ほど上げられたワーキングの論点をどう収斂させて、どういう形でまとめていくのか。
答:
 信託協会だけで、何か決めることはできないと思っていますので、今後、関係者とよく相談をしまして、1つの目安としては、6月を目途に厚生労働省ガイドラインの見直しが検討されると言われていますので、そうした検討ペースと平仄をあわせて、信託協会としても積極的に検討をしていきたいと思います。
問:
 最終的には、信託協会としては、一つの自主ルールという形になるのか。
答:
 最終的にどういう形で、これを落とすかということについて、まだ明確なイメージを持っていません。例えば、厚生労働省のガイドラインとか、監督指針の手当といったことを含めて、今後、検討していくものと思います。
問:
 先ほどの2つの論点で論点整理にしようということか。
答:
 そういうことで考えています。
問:
 自主ルールに関連して、いわゆる信託協会は自主規制団体ではなくて、業界団体であるので、そういう組織的なところについても、この手のいろいろな金融商品が時代時代に出てくる時に信託銀行はそういったものの監視を当局に任せていいかという論点があると思う。信託協会の自主規制機能強化につながることはワーキングでは議論になっていないのか。
答:
 論点としてあるというのはわかりますが、現状、信託協会内でその論点が俎上にのぼっている訳ではありません。信託法、信託業法、監督指針などの枠組みで受託者の責務は定められている業界ですので、現状、そこまでのことを考えていません。
問:
 一連の再発防止策の中で、個社としてできることもあるかと思う。三井住友信託銀行として、率先してやっていこうということがあれば伺いたい。
答:
 これは、先ほど申し上げたように例えば信託銀行が個社としてやるにしてもその裏付け、例えば、厚生労働省のガイドラインに何かが記載されているとか、業務を行う上での裏付けが必要と思います。まずは、信託協会として先ほど申し上げた論点について、関係する厚生労働省や金融庁とよく相談しながらまとめていくのだと思っています。
問:
 先ほどの論点の1つについて、もう少し詳しく伺いたい。つまり、特金の受託者である信託銀行が年金基金に対する確認とはどういうイメージか。
答:
 これは、特金を受託する際に、厚生年金基金が運用者から運用のスキームについて、きちんと聞いているかということを確認するということ。確認内容は、誰が関係者で、関係者の相互の関係はどうなっているか、外部監査はどうなっているか、あるいは運用プロセスとしてどういう人が何をすることになっているか、ということについて説明を受けているかを確認する。
 例えば、それは、厚生労働省のガイドラインに、基金は運用者を選任する際に説明を受けなければならない、というようなことを書き込んでいただき、特金の受託者である信託銀行は、契約前にそれを確認しないと特金を受託しない、というプロセスを入れるといったものです。
問:
 基金が強い意思で、投資顧問会社から指図を受けたいといった場合は、それを止めるものではないけれど、自覚させ、牽制する機能ということか。
答:
 それも今後の検討課題だと思います。確認したところ非常に問題があるといった場合にどうするかということもあります。その場合には受託を拒否するのか、現状、受託を拒否することはできないという格好ですので、その場合にどうするのかは1つの検討課題だと思います。
問:
 そのような検討を通じて、何を実現していきたいのか、考え方をお聞かせいただきたい。
答:
 1960年代前半の企業年金制度の創設時から関わってきた信託業界として、今回のような事態が起きたことは非常に残念であります。企業年金制度が健全に発展していくために、今後どのようなことができるのかという観点で考えていくということだと思います。

インサイダー取引について

問:
 インサイダー取引の件について、証券取引等監視委員会では、前例がなく資本市場の信頼を失墜しかねないと重大視しているが、改めてその受け止めと信託協会の代表になられたので、信託協会としてどう再発防止をしていくのか。
答:
 これは個社の問題であり、個社として、お答えします。今回の事案と従来のインサイダー事案と1点違うところは、市場に参加しているプロにより構成されたということであります。金額の多寡ということではなく、証券資本市場の信頼ということに傷がついたという意味で、非常に重大に受け止めています。そのために、個社として、再発防止について、すでに皆様にもお話していますが、徹底した対策を採っていこうと考えています。信託協会として対応するということは考えていません。

AIJについて

問:
 AIJの再発防止について、今後、対策を実施していくと、新たな手数料をもらうというような形となるのか、今のままなのか。
答:
 先ほど申したようなことが行われた場合、どの程度の内容かによって、どの程度コストが増えるのか、現時点でははっきりとはわかりませんし、どのレベルのことを、どの人がどう行うのかによって変わってくると思います。コスト面でそれほど大きくかかることはないのかもしれないし、ある程度コストがかるかもしない。スキーム全体でコストが増加するのであれば、実効性とコストのバランスを考える必要があるとは思いますが、増えたコストについて関係者がどのように負担していくかということは、別の問題だと思います。基本的には、契約のなかでおのずから決まってくるものと思います。
問:
 1つ目の論点で確認したいのですが、つまり、年金基金に対する働きかけということか、運用者に対して説明していますかというようなことを確認するなり、促すことも考えられるのか。
答:
 委託者である基金から特金を受託をする際に、基金が説明を受けているかを確認するという構成になると思います。まだそこまで検討が進んでいるわけではないと思いますが、例えば、運用者に対しては、何らか監督指針なりで規定するのかということも含めて、今後の議論だと思います。先ほど申しあげたのは、受託者が、委託者と契約する際の話です。
問:
 AIJ問題で被害を受けた基金が、集団訴訟を起そうという動きがあって、その中に、信託銀行の責任を問う声も出てきているようですが、特金受託者の立場として、改めて受託者の責任、例えば善管注意義務などが、法律的にどこまであるのか、考え方をお聞きしたい。
答:
 今回の事態というのは、大変残念なことであります。ただ、非常に残念でありますが、今の枠組みのなかで、受託者が不正を見抜くということは、難しかったのではないかと思います。
 理由は、年金特金という商品が、どのように生まれたかというと、1990年に投資顧問会社が運用に参入するとき、管理の器として年金特金という商品ができました。
 年金特金は、運用者の指図どおりに管理をするという構成になっています。例えば、契約等も、運用者の指図どおりに管理するという前提で構成されています。また、時価の取得についても、運用者から、細かく段取りの指図があります。そういうなかで、受託者として不正を見抜くということが、大変残念ではありますが、難しかったのだと思います。しかし、今後ともこういう格好でいいとは思っていません。こういうことが起きない、なるべく起きないようにする仕組み作りは必要だと思います。その仕組みが機能するということを、企業年金制度を運営する関係者の一人として、きちんと見ていくことで、積極的に貢献していきたいと思っています。

以上

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