中野会長定例記者会見

平成26年10月16日

冒頭、振角専務理事より、教育資金贈与信託の本年9月末の受託状況、信託財産総額が本年8月末現在で862.8兆円と史上最高額となったこと、本日開催された理事会において、「規制改革に関する提案」をとりまとめ、内閣府規制改革推進室宛てに提出したことなどの説明を行った。

半年を振り返り

信託協会会長の中野です。
  会長就任時に、所信として「信託機能の発揮による経済・社会の発展・成長への貢献」、「信託に対する信頼の向上」を掲げ、活動してきました。
  この半年を振り返り、これまでの活動状況と今後の取り組みについて報告したいと思います。

まず、税制改正要望ですが、今年度は、「教育資金贈与信託に係る贈与税の非課税措置の恒久化」、「少子化対策のための信託の活用」、「事業承継・資産承継における信託の活用」、「企業年金等の積立金に係る特別法人税の撤廃」等を要望しております。

「教育資金贈与信託」については、先ほどご説明のとおり、平成26年9月末時点で、契約数はおよそ8万9千件となり、信託財産設定額は、6,000億円を超えました。
  このように、多くのお客さまのご支持をいただいている商品ですが、来年12月には非課税措置の適用期限を迎えるため、期限を撤廃し恒久化すること等を要望しております。こちらは文部科学省、金融庁の共同要望として取り上げられています。

「少子化対策のための信託の活用」については、少子化の一因である若年層の結婚・出産等に対する経済的な負担を軽減するため、「子・孫の結婚・出産等を支援するための贈与を目的に設定する信託に係る非課税措置」を要望しております。
  少子化対策に加え、高齢者層から消費性向の高い若年層への資産移転により、消費の拡大を通じた経済の活性化も期待されます。こちらは内閣府、金融庁の共同要望として取り上げられています。

「事業承継・資産承継における信託の活用」ですが、高齢化社会が急速に進行する中、中小企業においても経営者の事業承継は、重要な課題となっております。
  このような中、現在の事業承継税制は、株式を直接承継する場合に限られており、信託された株式については対象となっていないことから、信託の機能を十分に活用できない状況になっています。そのため、信託された株式についても事業承継税制を適用することを要望しております。

「企業年金の特別法人税」については、平成26年度税制改正において、課税停止期間が3年間延長されておりますが、国民の老後生活の維持・安定という社会的要請に鑑み、撤廃の措置を講じていただきたいと考えております。

次に、規制改革に関しましては、後見制度支援信託の受託件数が昨年度は874件の増加だったものが、今上期だけで1,444件増加し、2,492件となっております。これは、信託協会の規制改革要望により、信託代理店に係る規制が緩和されたことも背景にあると考えております。後見制度支援信託は後見制度における財産管理のために信託を活用するものであり、その普及は社会的にも意義があるものと考えております。
  今年度におきましても、お客さまの利便性を向上させることにより信託機能の活用を一層促進するため、本日、「規制改革に関する提案」を提出しております。

また、我が国の証券市場の国際競争力を強化するため証券決済制度改革が進展しているところでありますが、信託業界では、6月より運用有価証券信託における国債取引について、国債の清算機関を通じた取引への参加を開始するなど、決済リスクを低減し、効率性を高めるための取り組みを進めております。

なお、2月に公表された「日本版スチュワードシップ・コード」について、信託協会では6社が受入を表明しております。私どもも日本を代表する機関投資家として、投資先企業の持続的な成長とお客さま・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るため、積極的に取り組んでまいります。

こうした取り組みに加え、信託協会では、受託者責任に関する調査・研究を進めているほか、信託の認知度をより高めるため、11月には事業承継をテーマに信託オープンセミナーを開催するなど、信託に対する信頼の向上に向けて取り組んでおります。

以上、これまでの活動状況について報告しました。残された半年につきましても、「信託機能の発揮による経済・社会の発展・成長への貢献」、「信託に対する信頼の向上」のために活動してまいりたいと存じますので、引き続き、ご理解、ご支援をいただきますようお願い申し上げます。

以下、質疑応答

教育資金贈与信託等

問:
 教育資金贈与の非課税措置に関して、信託協会で恒久化を要望しているが、その見通しはどうなのかお伺いしたい。また、結婚・出産・子育てを支援するための信託に関する要望についても、その見通しはどうなのかお伺いしたい。
答:
 まず、教育資金贈与信託については、先ほど申し上げたとおり、実績がこの1年半で相当程度上がってきています。ニーズは高いものがあり、今後についても着実に増加していくと考えています。また、教育資金贈与信託は、教育の充実に資するということだけでなく、消費の拡大などを通じまして、日本経済の活性化にも繋がるということで、大変意義のあるものと考えております。
 信託協会では、7月に一般の方々を対象にアンケートを行いましたが、教育資金贈与信託については、約4割の方がこの制度を利用したいと回答し、また3割の方が制度の恒久化を希望しているという結果でした。
 こうした状況につきましては、関係者にも十分説明し、ご理解をいただいているところです。我々としては、恒久化の実現に向けて、今後最大限の努力をして参りたいと考えております。
 結婚・出産・子育て等の贈与にかかる信託の活用に関する非課税措置に関しては、少子高齢化は日本の最重要課題の一つと認識しております。結婚・出産・子育てに関する経済的負担をこの制度で軽減することは、少子化対策に資するものであり、この意義は大変大きいと考えております。
 今年7月に全国知事会が「少子化非常事態宣言」を公表し、こうした制度が提言されているほか、内閣府の「少子化危機突破タスクフォース」におきましても提言されているところです。この制度の必要性・重要性の理解は高まっているのではないかと認識しておりまして、実現に向けて全力で取り組んでいきたいと考えている次第です。

消費税の引上げ、景況感

問:
 来年10月から消費税率の引き上げが予定されており、最終的な政府の判断が本年末になされることになっているが、引上げについての会長のご見解と、日本経済の現状のご認識をお伺いしたい。
答:
 消費税の引上げに関しましては、よほどの景気の落ち込みがない限りにおいては、予定通り実施すべきであると考えております。
 まず、今の世界経済の状況について申し上げますと、全体としては、穏やかに回復に向かっていると考えておりますが、先日公表されたIMFの「世界経済見通し」やG20財務省・中央銀行総裁会議において、ユーロ圏の景気減速など、下振れリスクが高まっているという認識が示されたと思います。
 次に、日本経済について申し上げますと、消費税の引き上げに伴う駆け込み需要の反動や天候不順もあり、足元生産面を中心に一部弱い動きも見られますが、全体としては緩やかな回復基調にあると思います。企業収益は堅調に推移しており、先般の日銀短観でも、大企業の設備投資は前年比8.6%の増加と、6月時点に比べ改善しております。
 また、私自身が経営者と話していると、業種によってばらつきがあるかもしれませんが、総じて企業経営者のマインドは悪くはないと認識しております。雇用環境の改善や賃上げの動きが支えとなり、個人消費も回復基調にあると思います。従いまして、足元の動向は注視していかなければならないですが、経済は緩やかな回復基調にあるとみております。
 日本経済の再生におきましては、経済成長と同時に、財政再建も非常に重要なことだと認識しており、この両立を図っていかなければならないと考えております。当然、歳出面での抑制に取り組まなければならない訳であり、税収増も図り、バランスをとって回復していくことが重要と考えております。このような観点からも消費税の引き上げは必要だと考えております。また、仮に消費税の引き上げを延期した場合、日本の信認低下を招いて、株式市場、債券市場に大きな影響をあたえる懸念があると認識しております。

市場動向

問:
 足元の動きとして、円高、株安、金利低下など、市場のボラティリティが高まっていると思いますが、こういった直近のマーケットの状況をどうみているか教えていただきたい。
答:
 このところ市場の変動が激しくなっております。世界経済の減速懸念、地政学的リスク、その他いろいろな要因が重なって、株価下落、長期金利の低下、原油価格相場の下落などリスク回避的な動きが強まっていると認識しております。
 一方で、足元の実体経済の状況は、先ほど申し上げたとおり、緩やかな回復基調にあると考えております。企業業績も堅調に推移していると考えます。アベノミクスがスタートし、日銀の異次元緩和政策があり、世の中のマインドが変わり、景気が上向き、株高・円安が進んできました。こういった中で、世界経済の減速懸念等によるリスク回避的な動きが強まり、株価が世界的調整局面にあると考えております。今後の動向を注視していく必要があると思いますが、マーケットが大きく変動するのは好ましくないと思いますので、早く落ち着きを取り戻してほしいと思っているところです。

事業承継等

問:
 事業承継は今後も増えていくことが予想されますが、それに対する期待感、課題などがあれば、お伺いしたい。
 また、後見制度支援信託についても増えているが、その背景について改めてお伺いしたい。
答:
 来年1月からの相続税基礎控除額引き下げもあり、相続に関する関心が高まっております。そういう中で、財産管理機能や資産承継・事業承継に関する機能を持つ信託銀行に対する期待も、非常に高まってきていると考えます。特に、資産だけではなくて、事業まで含めてどうやって次世代に承継していくかということについては、中小企業を中心とするオーナー経営者の最大の関心事であり、信託銀行は、従来からこの分野に力を入れてきたということです。
 信託業界としては、世の中全体のニーズの高まりに対して、遺言信託、遺言代用信託などいろいろな商品を揃え、サービスを充実させてまいりました。また、コンサルティング機能を今まで以上に強化することが重要だと考えており、お客さま一人一人に最適な提案をしていけるように最大限努力していきたいと思っています。このような取り組みを通じて、信託におけるビジネスのフィールドも拡大していくのではないかと思います。
 後見制度支援信託の増加につきましては、信託契約代理店に関する規制緩和が一つの大きな要素であったのではないかと思います。従来、後見制度支援信託のような元本補てん付の金銭信託について、信託業法の規制に加えて、金商法の規制もかかっていました。金商法の規制が適用除外になったというのが規制緩和の概要です。信託契約代理店を通じて販売する際に、両方の規制がかかっていたわけですが、金商法の規制が、適用除外になったことにより、信託契約代理店の方々が、商品を提供する際の事務負担が軽減されました。
 個社としては、みずほフィナンシャルグループにおいても、当行の信託契約代理店となっているみずほ銀行で後見制度支援信託の取扱いを今年4月から開始しております。
 後見制度支援信託は高齢化社会が進行している中で、非常に重要な商品だと考えており、社会貢献にもつながっていくので、信託協会としてもしっかり取り組んでいきたいと考えております。

新商品開発

問:
 教育資金贈与信託など通じて、信託の利用者がどんどん広がっていく中で、税制改正だけでなく、新しい信託商品の開発、取り組み等があれば教えていただきたい。
答:
 教育資金贈与信託や少子化対策としての結婚・出産・子育てなどは、税制改正要望として取り組んでおりますが、それ以外にも、高齢化社会が進行している中で、各社は商品開発、サービスの提供に取り組んでおります。
 例えば、家族信託ですと、委託者が亡くなられた場合に、相続人が一時金ですぐ受け取れるタイプの商品や、あるいは毎年贈与を行えるタイプの商品が開発されております。今後もお客さまのニーズにお応えできるように、商品・サービスの開発、提供に各社とも全力で取り組んでいきたいと考えております。

以上

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