常陰会長定例記者会見

平成28年03月17日

冒頭、振角専務理事より、本日の理事会で決議した、倫理綱領改定のポイントについての説明を実施した。

1年間の振り返り

信託協会会長の常陰でございます。昨年4月の会長就任からまもなく1年が経とうとしております。皆様のご支援に心より感謝申し上げます。本日が会長としての最後の会見になりますので、1年を振り返って、信託協会の取り組みを報告いたします。就任時の所信として、「信託機能の一層の活用による経済・社会への貢献を図る」および「受託者精神の重みを強く意識しなければいけない」と申し上げました。加えて、今年1月に信託協会が創立90周年を迎えるにあたり、信託のプレゼンスの更なる向上を掲げました。

一つ目の「信託機能の一層の活用に向けた取り組み」としましては、税制改正要望は、既存商品の改善に加えて、政府の政策課題を踏まえた提案を行いました。結婚・子育て資金一括贈与非課税制度については、不妊治療に係る薬代などの取り扱いの明確化が措置されましたが、その他の要望については、ご理解をいただいたものの、残念ながら十分な成果には至りませんでした。
  また、近年注目をいただいている教育資金贈与信託は、取り扱い開始から約3年が経過し、信託財産設定額は1兆円を超えてきており、結婚・子育て支援信託と合わせてご好評を頂いております。更なる利用促進や普及に向けて、各社共同での新聞広告や、利便性向上に向けた取り組みを実施いたしました。今後も、信託機能を活用した新たな商品やサービスの提供に向けて、様々な活動を実施して参ります。

二つ目の、「受託者責任についての取り組み」としましては、今年度の金融行政方針で徹底が求められた「商品開発、販売、運用、資産管理、それぞれに携わる金融機関等が、真に顧客のために行動しているか」という観点も踏まえ、受託者責任のあり方を改めて確認し、当協会の倫理綱領の改定を行いました。この倫理綱領は、いわば協会としての「フィデューシャリー宣言」と考えております。
  信託業界においては、これまでも受託者責任の履行の徹底を図ってきたところではありますが、この新たな倫理綱領を踏まえ、改めて委託者や受益者から託された信頼の重みを自覚し、適切な業務運営に努めていきたいと考えております。
  因みに、昨年12月には、フィデューシャリー・デューティーを主たるテーマに、信託および金融の専門家を対象としたシンポジウムを開催いたしました。その中でも、今回の倫理綱領改定の柱でもある専門性の向上や利益相反管理、情報提供の重要性などについて、活発な議論が行われ、参加者からも大変参考になったと言われております。

三つ目の「信託のプレゼンスの更なる向上」につきましては、この1月に創立90周年記念セミナーを開催し、多くの一般の方々にご参加いただき、相続に関する基礎知識と信託を活用した対策をお伝えさせていただきました。また、その際に信託協会として新たに作成したリーフレットをお配りしております。
  これらの取り組みは、信託をあまりご存じでない一般の方々に、少しでも身近に感じていただくという意味で、信託の普及にとって大変有意義であったと感じております。

いま申し上げた取り組みや成果は、信託協会の活動に関係する全ての皆様のご尽力の賜物であり、この場をお借りして改めて厚く御礼を申し上げます。

最後になりますが、信託協会の会長としての努めは、4月に三菱UFJ信託銀行さんに引き継がせていただきます。皆様におかれましても、今後とも信託協会の活動に対して、より一層のご理解、ご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

以下、質疑応答

フィデューシャリー・デューティー

問:
 冒頭、倫理綱領改定のポイントについて説明があったが、信託協会長としてどのように考えているか、また他業界との連携を含めた今後の展開について教えて欲しい。
答:
 今回の改定では、解説の中に「ベストプラクティスの例示」を追加したことがポイントであると認識しています。倫理綱領というものは、いわゆる「プリンシプル(原則)」であり、それを実際の行動や実践につなげるにあたって、その間をつなぐ「具体性」が必要であると考えました。そこで、そのつなぎ手として、ベストプラクティスの例示を行いました。
 今後の展開につきましては、先ず業界内では倫理綱領の改定の趣旨や内容について、加盟各社にご確認いただき、浸透を図ってもらうことが重要であり、協会としても研修の機会の設営など、サポートをする必要があると考えております。
 また、業界外に対しましては、運用会社や販売会社など他業態の方々に、信託協会の取り組みを示し、参考にしていただくことも副次的効果になると考えております。
 一方で、他業態の取り組みを学ばせてもらい、信託協会としても更なる高度化につなげていければとも考えております。

マイナス金利

問:
 マイナス金利政策が銀行業務や信託銀行特有の業務に与える影響と、日本経済に与える影響をお聞ききしたい。また、先日の日本銀行決定会合でMRFをマイナス金利適用除外とする決定をしたが、その点についても併せてお聞かせいただきたい。
答:
 マイナス金利政策を踏まえた今後の経済見通しですが、政策導入後間もないこともあり、基本的にはよく見ていく必要があると考えております。マイナス金利政策が、景気回復につながっていくかどうかは、借り入れを含む資金調達による新規投資が増加するか、また各企業において潤沢な手元資金を新たな成長分野に振り向けるか、これらの点が最大のポイントであると見ております。
 足元では、住宅ローンなど前向きな動きが始まっておりますが、こうした動きが企業を中心に広がっていくかを、期待を込めて見守っていきたいと考えております。
 企業について申し上げますと、政策導入前の1月までの銀行の貸出は、53ケ月間増加が続いてきております。その意味では、企業の設備投資動向は、緩やかながらも増加傾向が見られます。貸出は企業の手元流動性、手元資金の厚さから加速しているとまでは言えませんが、基調はしっかりしていると思われ、少なくとも基調をしっかりと下支えする効果は出てくると考えております。
 更なる資金需要の創出につながるかは、民間企業および金融機関の双方が努力をして、成長のために知恵を絞っていくことが重要であり、今後、民間の成長に向けた力が問われると理解しております。マイナス金利政策はわが国では初めての経験であり、今後の市場の反応や国民への浸透などをよく見つつ、我々金融機関としてもその成果の実現に向けた対応を図っていきたいと考えております。

 銀行業務の影響につきましては、今回の政策スキームでの、個々の金融機関における基礎残高・マクロ加算残高・政策金利残高、並びに資金調達構造に違いがありますので、一概に測れないと思われます。マーケット全体で預金金利や貸出金利の低下が進んでおりますので、その影響が今後一定程度出てくると見ております。
 このような状況の中、貸出し等の金融仲介機能のより一層の発揮や、信託銀行らしいお客様のニーズに沿った資産運用商品を新たに開発、提供することで、「貯蓄から投資へ」の流れを、更に推進する重要な役割を担っていると自覚しております。

 信託業務の影響についてですが、信託勘定で受託している商品の余資や待機資金を、従来はコール市場等の短期金融市場で運用しておりましたが、マイナス金利の適用により、短期市場も相当縮小していることもあり、運用が困難な状況になっております。
 具体的には、投資信託やMRFが該当しますが、MRFは株式や投資信託への投資のための決済機能を担っていることもあり、信託協会としましても、日証協や投信協とともに、日本銀行にマイナス金利を適用しないよう要望を申し上げておりました。
 本件については、「前年の受託残高に相当する額を「マクロ加算残高」に加え、ゼロ金利とする」という措置をいただきました。MRFが持つ決済機能と「貯蓄から投資への流れ」を加速する役割をご理解いただいたものと認識しております。
 MRFは現在約10兆円強の残高がありますので、マイナス金利適用除外になったことで市場取引の安定化にもつながり、大きなプラスのインパクトがあるのではないかと考えております。

マイナス金利適用残高

問:
 昨日、日本銀行当座預金の残高発表があり、信託銀行はマイナス金利の適用残高が増えているが、MRFや金銭信託の他、その増加要因について説明してほしい。
答:
 業界全体の残高は精査中ですが、投資信託やMMF、MRF等の短期の運用資金が、信託銀行の日本銀行当座預金に滞留資金として回っていったという構図ではないかと考えております。MRFが2月末で約10兆円程度、MMFが約1.4兆円程度だったと思いますが、従前の残高が基礎残高であったとすると、資産管理信託銀行を含めた信託銀行の当座預金残高が前年より10兆円程度に増えているというのは、偶然符合したのかと推測しております。これが、結果的にマクロ加算残高になると理解しておりますので、信託銀行のマイナス金利適用対象となる残高は減少すると見ています。

MRFが元本割れした場合の考え

問:
 信託銀行は受託している立場であり、基本的には運用会社の問題かもしれないが、元本保証の商品ではないMRFが、運用環境の悪化によって元本割れした場合の対応についてどう考えるか。
答:
 MRFを損失補てんできるのは、金融商品取引法上、委託会社です。信託銀行の運用においては「実績配当主義が原則」であり、管理の失当等が無い限りは、実績配当とさせていただいております。今後については、関係者と協議して対応していこうと考えております。
問:
 「関係者と協議して対応する」とは、必ずしも信託銀行が補てんしない訳ではないと言うことか。
答:
 「実績配当主義が原則」であるため、基本的には信託銀行に善管注意義務違反等がなく、委託会社の指図に従って運用している限りにおいては、信託銀行が負担をすることはなく、信託の原則に立ち返らざるを得ないと考えております。そのような点を踏まえ、委託者や受益者とどのように対応していくかを協議していくものと考えております。

金銭信託

問:
 元本保証付きの金銭信託もあるが、元本割れした場合の対応についてどう考えるか。
答:
 金銭信託については元本補てん契約付きのものと、補てん契約付きではないもがありますが、元本補てん契約が付いていないものについては、「実績配当主義が原則」が適用されます。前年の残高を上回るようなことになれば問題にもなることも考えられますが、現在のところ投資信託やMRF等においては、残高が前年を上回るような事態は生じていないので、様子を見ながら見極めていきたいと考えております。
問:
 マイナス金利が適用される信託銀行の預金残高の約9兆円がほぼMRFということであれば、マイナス金利の適用が除外され、あまり経営に影響がないということでよいか。マイナス金利の適用による影響は、信託銀行だけではないということか。
答:
 仮の数値ではありますが、業績に与えるマイナスが発生すると報道されておりましたが、先ほどの「実績配当主義が原則」というルールを鑑みれば、信託銀行は当然にマイナス金利を負担するものではありませんので、今のところは業績に影響を与えるとは想定しておりません。

以上

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