池谷会長定例記者会見

平成28年10月20日

冒頭、振角専務理事より、ポケット版「信託統計」が配布された。

半年間の振り返り

信託協会会長の池谷でございます。
 まず、本年4月に、信託協会会長就任にあたり申し上げた2点の抱負に沿いまして、当協会・当業界の半年間の活動状況についてご報告をいたします。
 1点目の抱負として、「信託制度の更なる普及、健全な発展に努め、社会・経済に一層貢献して参りたい」と申し上げました。
 平成18年の信託法の全面見直し以降、少子高齢化・人口減少社会の到来に備え、財産の保全・世代間移転を促進する信託商品として、「遺言代用信託」、「後見制度支援信託」、「教育資金贈与信託」等の新商品を順次ご提供してきましたが、この半年間も更なる普及に努め、多くのお客さまにご支持いただきました。
 今後も引き続き、信託制度の持つ多様な機能・柔軟性を活用し、社会経済のニーズに対応した商品・サービスをご提供すべく、創意工夫に努めて参りたいと考えています。
 2点目の抱負として、「信託に対する信頼の確保に努めて参りたい」と申し上げました。
 私ども信託の担い手は、お客さまの信頼に応えるフィデューシャリーとして、法的義務を果たすことはもとより、高い倫理意識と専門性に基づいて、常にお客様のために誠実に行動することが求められます。
 今年3月に、かかる観点で見直しを行った当協会の「倫理綱領」について、会員各社への普及・徹底に努めて参りました。
 今後も、長い歴史の中で培われてきた当業界への信頼を更に確かなものとするべく努めて参ります。
 次に、今年度の税制改正要望でございますが、去る9月の理事会におきまして、計47項目から成る「平成29年度税制改正に関する要望」をとりまとめましたが、この場では主要な項目について概略をご説明申し上げます。
 1つ目は、「企業年金および確定拠出年金等の積立金に係る特別法人税の撤廃」です。ご存知の通り、企業年金および確定拠出年金は、公的年金を補完し国民の老後生活の維持・安定を図る上で重要な役割を担っており、本格的な高齢化社会を迎えるなか、その役割はますます高まっております。一方で、これらの積立金に特別法人税を課すことは、年金制度の持続性や受給権の保全に支障をきたすおそれがありますので、この撤廃を要望するものです。
 2つ目は、「事業承継税制の信託への適用」です。中小企業の経営者には、経営権を今すぐ手放したくはないが、万一に備えて後継者だけは固めておきたいというニーズをお持ちの方がいらっしゃいます。このニーズを満たす信託スキームとして有価証券管理信託がございますが、本スキームでは事業承継税制が適用されません。 経営者に対して、事業承継に向けた早期かつ計画的な取組みを促していくことは、わが国の重要なテーマの1つでもありますので、信託を活用した場合でも事業承継税制が適用されるよう要望するものです。
 以上、この半年間の活動状況についてご報告申し上げました。 残る半年間につきましても、協会長就任時に申し上げた2点の抱負を実現すべく努めてまいりますので、引き続きご理解、ご支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

以下、質疑応答

日銀の金利政策

問:
 日銀の金利政策について、1ヶ月前に新しい枠組みということで、長短金利操作付き量的・質的金融緩和が打ち出されたが、これについてどう評価しているか。特に、貯蓄から投資へという観点から見て如何か。足元の市況の見方も含めてお伺いしたい。
答:
 今回打ち出された金融政策に関しましては、かつてどこの国の中央銀行も手掛けたことのない政策ですので、その効果や評価を申し上げるには、一定の時間が必要だと認識しております。今、仰った長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策ですが、これは10年物国債の利回りを0%程度で推移するようにし、イールドカーブをスティープ化させるということを目論んでいるわけであります。これが実現されれば、保険や年金の運用に関しての改善が図られる可能性があると評価しています。
 それから、オーバーシュート型コミットメントに関しましては、安定的に物価上昇率が2%を超えるまで金融緩和を続けるという政策ですが、非常に強い姿勢を示されたものと評価をしておりまして、こちらの期待される効果としては、やはり企業などが長期に亘って安心感を得られるということを通じて、設備投資をはじめとした成長に資する投資をしやすくなる可能性があると評価しています。
 いずれにしましても、市場との対話を進めながらこのような政策を打ち出されたことに関しましては、非常に歓迎するものでございます。
 市況に関しましては、ちょうど1ヶ月前にこの政策が打ち出されて以降、端的には、株価・為替に象徴されるかもしれませんが、為替に関しましては、円安傾向が継続しておりますし、株価に関しましても、本日、17,000円を超え、今年度で言うとプラスゾーンにやっと入ってきた状況ですが、足元、この政策の評価による影響も含めたマーケットの動きと評価しております。ただ、アメリカの金融政策や原油の動向であるとか、当然ではございますが、色々な要素がマーケットに組み込まれますので、こういった諸々の中の1つの評価要素だと考えております。
 「貯蓄から投資へという流れの中でどうか」というご質問でございますが、特に私ども信託業界は、長年に亘り企業年金や公的年金の運用であるとか、制度管理であるとか、こういったものを手掛けて参りました。例えば確定拠出年金、こちらはDC年金と言われておりますが、足元の状況を申し上げますと、まだまだ定期預金等、元本確保型に過半を振り向ける方が多くいらっしゃいます。こうしたご資金をどういう形で資産形成・資産運用に振り向けていくかがテーマになりますが、これはやはりベースとなるリスクやリターンの考え方、分散投資の考え方も大事ですが、こういったベースの上に、ライフイベントなどを踏まえたシミュレーションなどで可視化をしながら、それぞれ個人個人、一人ひとりのイメージを作って頂くことが必要ではないかと思います。DCもそうですし、積立型NISAも今非常に力を入れていますが、いずれにしましても、一人ひとりのライフイベント、例えば結婚や出産・子育て、家を買う、そして、また老後の生活を設計するといった様々なライフイベントについてのシミュレーションを経ながら、手触り感があるようなかたちでご納得いただきながら資産形成を進めて頂くということが肝要かと思います。こういったことも、冒頭申し上げましたように、長年、企業年金制度等に携わってきた私どもなりの工夫をしながら進めてきているところです。いずれにしても、「貯蓄から投資へ」の流れは大きなテーマですので、最大限の努力を傾けて参りたいと考えております。

当座預金の動向

問:
 当座預金の動向についてお伺いしたい。マイナス金利政策が導入された以降、特に信託銀行の当座預金が大きく増加したという傾向があり、今、足元では落ち着いているかもしれませんが、この要因と今後の展望についてお伺いしたい。
答:
 こちらに関しましては、皆さん、仕組みは良くご存知かと思いますが、実質的には2月からマイナス金利が導入されて以降、コール市場が急激に縮小しました。今までは、投資信託であれ年金信託であれ、運用の余資部分はコールに回っていましたが、マーケット自体が縮小したことから、信託銀行に余裕資金が流れ込んできたということですが、個社の話でいえば、3月くらいがピークで、これに比べると、足元は8割程度となっています。これは、コールマーケット自体が3月・4月頃から比べると、マイナス金利導入前までとは言えませんが、多少回復してきたことが要因です。ある種の均衡状態にあると思いますので、例えばの話ですが、マイナス金利の更なる深堀りなどの大きな変化がなければ、今のような均衡状態が今後も続くと認識しています。

フィデューシャリー・デューティー

問:
 信託銀行各社は、フィデューシャリー・デューティーということで、新しい専門部署を設けるような動きが足元であるかと思いますが、顧客目線といったときに、今、業界で何が課題なのか、どのように認識されているかをお伺いしたい。
答:
 
 非常に大切なテーマだと認識しております。
 2つあると思っています。
 1つ目は、個人のお客様向けの投資商品販売におけるフィデューシャリーの発揮ということでございますが、手数料の開示をきちんと行うということであったり、資産形成に向かっていただくために、リスク・リターンのご説明であるとか、個々人、それぞれのお客様のリスク許容度、これを測るのは中々難しいのですが、じっくりと膝詰めでお客様のお考えを伺いながら、的確なアドバイスを差し上げることが必要になってくると認識しております。いずれにしましても、今ご質問がありましたように、顧客の立場に立った、顧客本位の投資商品販売を行うことは今まで以上に重要であると認識しておりますので、これを進めていくということでございます。
 2点目ですが、これは、信託銀行ならではのテーマになろうかと思いますが、先程も申し上げましたように、長年に亘り企業年金や公的年金の運用に携わらせていただいておりまして、いわゆる運用機関として一定のポジションにあると認識しています。この観点から申し上げますと、これも積極的に手掛けておりますが、スチュワードシップ・コードをどう実現していくか、実践していくかということに関わってくると思っております。
 さらに分けますと、1つは、議決権行使に関する開示であります。現状も結果に関する開示はございますが、これを今後、政府の諸会議のご議論も踏まえつつ、例えば、アセット・オーナーさんとご議論することをはじめ、開示の強化・拡大ということを検討していく必要があろうと考えております。
 もう1つは、エンゲージメントと呼ばれております、発行企業・上場企業との対話です。足元、非常に上場企業のIR活動も積極的になってきておりますし、私ども個社で申し上げても、面談件数等は増えてきていますが、ここで大切なのは、良い意味での緊張感を持った関係を構築しながら建設的な対話を進めていくということかと思います。これを通じて、スチュワードシップ・コードの目的であります中長期的な企業の持続的成長に資するよう、今後も努めてまいりたいと考えております。

マイナス金利政策による決算への影響

問:
 マイナス金利に関して2点お伺いしたい。
 1点目は、上半期が終わり、決算に与える影響はどの程度あったのか。当座預金の積上げの部分と、それ以外にも金利の引下げ効果によってどうなったのか。
 もう1つは、黒田総裁は、マイナス金利の深堀りについては選択肢として残していると思うが、深堀りされた場合の影響をどのようにお考えか。また、深堀りするにあたって、日銀の判断としてどのようなことを望みたいか。
答:
 信託協会全体の数字はございませんので、個社として申し上げると、マイナス金利政策により、メガバンクさん等でも言われておりますように、やはり資金収益としてのマイナスがございます。預金金利の低下が限定的な中、スプレッドが縮小しています。あとは、オプション等を使う際にも影響がありますので、こういった諸々、トータルでの資金収益への影響の方が、いわゆる受託余資のマイナス金利部分の影響より大きいと思います。
 深堀りについての影響ですが、受託余資に関しては先程申し上げましたように、コールマーケットの新たな均衡点を探りに行く中で、どのくらいボリュームが変化するかということに関わってくると思いますが、これも資金収益全体に対するマイナス影響の方が大きくなるのではないかと私個人としては推測をしています。
 それに関しましては、色々と副作用などもいわれてはおりますが、先程も「市場と対話しながらの政策は非常に歓迎したい」と申し上げましたように、金融の現場をあずかっている私どもとの意見交換を密にさせていただきながら政策のご判断をいただきたいと考えています。

マイナス金利政策による手数料負担

問:
 マイナス金利導入後に、4月だったと思いますが、年金のお客さん側に手数料を取る形での適用を始められたと思いますが、今後、マイナス金利の深堀りがあった場合は、その手数料も拡大していくとの認識で宜しいのでしょうか。
答:
 先程の回答と重複すると思いますが、資産運用という箱の中の最後の部分といえる短期の資金がどう流れるかに関わってくると思いますので、その均衡点次第でボリュームが変わるとは思いますが、我々の当座預金のボリュームが増えれば、お客様から頂戴する手数料に関しても変化すると認識しています。

議決権行使結果の開示とエンゲージメント

問:
 スチュワードシップに関連してお話がありましたけども、1つは、議決権行使のところで、個別議案の開示を進めていくべきであるとの議論がありますが、これについて現状どのようにお考えなのか。
 2つ目は、エンゲージメントの中で、パッシブでのエンゲージメントは果たして有効なのかどうかという議論がなされています。今、「パッシブでもやっていこうではないか」という流れになっているかと思いますが、これについてのお考えをお聞かせ下さい。
答:
 いずれも信託協会としての見解ではなく、個社として申し上げます。
 1つ目の個別議案の開示でございますが、当然、運用会社として、これをどう開示していくかということがテーマになっていることは認識しております。政府の諸会議の議論の中では賛否両論があるように伺っております。その議論の進展を見ながら、そしてアセット・オーナーとの議論も深めながら、必要な手立てを講じていきたいと思っております。
 2つ目のパッシブについては、正直に言って悩ましいです。パッシブ運用は、例えば企業年金のリバランスのために使うことをはじめ、非常に普及していますが、千数百の銘柄全ての企業とエンゲージメントはできないという中で、例えば、個社で今手掛けようとしている試みで申し上げますと、一定の期間の中で、何か特別な事案があった会社をピックアップするとか、業績が急激に悪化した会社を選ぶとか、あとはベーシックですが、時価ウェイトの大きい、これは要するに指数に対する影響が大きいということですが、こういうところを適宜選びながら進めていくのかなと。コスト面もよく議論されますが、コストに関しましてはアセット・オーナーのお考えもお聞きしながら進めていくべきだと思います。これは、効果検証が非常に難しいテーマだと思っておりますが、試行していくべきだと私自身は考えております。

以上

ページのトップへ戻る