飯盛会長定例記者会見

平成29年10月19日

冒頭、振角専務理事より、本日の理事会において「規制改革に関する提案」を取りまとめ、内閣府 規制改革推進室宛てに提出したこと、信託統計のポケット版を作成したことの報告を行った。

半年間の振り返り

信託協会会長の飯盛でございます。
 それでは、この半年を振り返り、これまでの活動状況と今後の取り組みについて報告したいと思います。
 会長就任時に、所信として「信託機能の発揮による社会・経済の発展・成長への貢献」、「信託に対する信頼の向上」を掲げ、活動してきました。
 「信託機能の発揮による社会・経済の発展・成長への貢献」といたしましては、少子高齢化の進展を背景に、円滑な資産承継や財産管理に関するニーズに応える商品である「遺言代用信託」、「後見制度支援信託」、「教育資金贈与信託」等が、この半年間においても順調に積み上がりました。引き続き信託の多様性や柔軟性といった特性を活かして、お客さまの多様なニーズに応えてまいりたいと思います。
 また、本年5月には「日本版スチュワードシップ・コード」が改訂されましたが、私どもも日本を代表する機関投資家として、投資先企業の持続的な成長とお客さま・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るため、スチュワードシップ活動の実効性向上に取り組んでおります。
 これらの取組みに加えまして、信託協会では、信託の認知度をより高めるため、今月11日に「日本版スチュワードシップ・コードの改訂」をテーマに信託オープンセミナーを開催するなど、「信託に対する信頼の向上」に向けた活動を行っております。
 
 次に、今年度の税制改正要望ですが、「事業承継における信託の活用」、「『教育資金贈与信託』『結婚・子育て支援信託』に係る贈与税の非課税措置の恒久化」、「企業年金等の積立金に係る特別法人税の撤廃」等を要望しております。
 まず「事業承継における信託の活用」について、ご説明申し上げます。
 現在、経営者の円滑な事業承継に係るニーズに対し自社株式の贈与・相続における納税猶予制度が手当てされておりますが、信託を活用して株式を後継者に移転した場合にも適用対象とすることを要望するものです。
 中小企業において、経営者の高齢化が進み、また、後継者難から廃業せざるを得ない企業が増えている中、中小企業がその活力を維持しつつ事業活動を継続し、かつ経営が次の世代へと円滑に承継されていくことは、わが国経済の持続的な成長を確実なものとする上で極めて重要であると考えております。
 
 次に「教育資金贈与信託」については、直近では、加盟会社合計で契約数が約18万件、信託財産設定額が約1兆3,000億円にまで伸張しました。これは、平成31年3月末を期限として贈与税の非課税措置が行われているものですが、わが国の成長力・競争力強化の観点から、更なる教育機会の充実・人材育成が極めて重要と考えており、また世代間の資産移転を促進し、経済活性化を一層促進する観点からも、本特例措置の適用期限を廃止し、恒久化することを要望するものです。
 
 また、先ほど振角専務理事から報告いたしました通り、本日「規制改革に関する提案」を内閣府 規制改革推進室に提出しております。税制改正要望と併せ、引き続きこういった要望・提言を行うことにより、お客さまの利便性向上等に努め、信託のより一層の普及・発展に取り組んでまいりたいと思います。
 
 以上、これまでの活動状況について報告申し上げました。残る半年につきましても、「信託機能の発揮による社会・経済の発展・成長への貢献」、「信託に対する信頼の向上」のために活動してまいりたいと存じますので、引き続き、ご理解、ご支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

以下、質疑応答

議決権行使結果の個別開示

問:
 金融庁が5月にスチュワードシップ・コードを改訂してから初めて信託銀行各行が議決権行使結果を個別開示しました。開示内容について若干のばらつきがありましたが、全体として会長はどのように評価されていますか。また、個別開示が始まったことによって日本の企業統治にどういう影響を及ぼすとお考えでしょうか。
答:
 スチュワードシップ・コードの改訂版が5月29日に出されていますが、機関投資家は、私ども信託銀行以外に生命保険会社、損害保険会社や投資顧問会社等様々なプレーヤーがおり、スチュワードシップ責任を果たすため、それぞれ議決権行使の判断基準も含め、各社各様の方法で取組みがなされているという認識であります。
 そういった状況でありますので、個別議案の賛否についても異なっています。また、個別開示については理由を付して開示をしないとしている社もございますし、賛否理由を含めた開示内容やその方法についても対応が分かれているという状況でございます。ただ、何れも可視性を高めるために工夫して確り取り組んでいただいていると思います。
 そして、どういう影響を及ぼすか、というご質問でありますが、スチュワードシップ・コード制定の趣旨は申し上げるまでもなく、機関投資家が適切にスチュワードシップ責任を果たすことによって投資先企業の持続的成長を促し、それが顧客、受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図ることを目的としているわけでございます。
 今回、初めて議決権行使結果の個別開示という取組みがなされたわけですが、一方でスチュワードシップ責任については、それぞれ従来からも運営が確りとなされていると存じています。言えることは、透明性が高まったということではないかと思います。日本経済を確りと成長させていくためには、ただ議決権行使結果を開示すれば良いという話ではありません。スチュワードシップ・コードに従って運用機関のガバナンス向上を果たす、あるいは利益相反管理態勢を強化する、また、あるいは特にパッシブ運用に係るエンゲージメントの取組みを強化する、といったことを確り行うことが肝要ではないかと考えている次第であります。

アベノミクスの評価等

問:
 現在行われている総選挙に関してですが、まず、アベノミクスに関する会長の評価についてお伺いしたい。また、安倍政権が消費税の使途変更を掲げており、財政再建の機運が後退しているように見えますが、日本経済や金融市場への影響も含め、どのように考えておられますか。
答:
 アベノミクスは、安倍内閣が誕生して5年弱、デフレ脱却と経済再生を最重要課題として取り組んで来られたわけでございます。この間、消費増税による一時的な落ち込みはございましたが、景気回復は、先月「いざなぎ景気」を超えて、戦後2番目の長さになりました。また、有効求人倍率は8月の発表では1.52倍で43年ぶりの高水準、失業率は23年ぶりの低水準であり、給与所得も増加基調ですので、雇用・所得環境が大きく改善していることについては間違いないことと評価しているところでございます。
 一方、景気回復の実感がわかないとの指摘がありますが、これは58か月に亘り景気回復しているにも拘わらず、GDPが「いざなみ景気」と同様、それほど大きく増えていないことに加えて、人口減少や少子化・高齢化といった構造的な問題が将来の経済成長や社会保障制度の持続性に対する国民の不安につながっているからではないかと思っています。
 従って、総選挙の結果発足する内閣には、これら国民の不安を確りと取り除きながら、経済再生が確固たるものとなる施策を強力に進めていただきたいと思っています。
 2つ目のご質問については選挙の真っただ中でありますし、何が良いかという回答は差し控えさせていただきますが、消費税を上げれば消費にとってマイナスの影響があり、増税をしなければ財政規律、プライマリーバランスの均衡が更に遠のき、我が国の信用に対する不安が惹起されるということであります。これは我が国にとって非常に重要な問題でありますので、選挙結果、それからその後の国会審議等を通じて適切な方向感に導かれることを期待しております。ただ、着実な経済成長か財政再建か、という二者択一というのはいささか単純過ぎる議論であり、経済成長を通じて所得税や法人税の増収を見ているのがここ近年の状況であり、一面のみで議論するわけではなく、その他の政策を含めて、これらの課題にどう取り組んでいくのかを確りと、アカウンタビリティをもって対応していただくことが重要なのではないでしょうか。

人生100年時代

問:
 「人生100年時代」と言われていますが、一方で長生きするリスクもあろうかと思います。信託業界として果たせる役割は大きいと思いますが、業界としての対応、個社としての対応についてお伺いしたい。
答:
 
 「『人生100年時代』に向けた信託協会としての取り組み」というものは特に設けていませんが、信託法改正以降も、信託業界では色々な商品を作って来ました。先程申し上げました、遺言代用信託や後見制度支援信託、教育資金贈与信託等です。こういった商品は、高齢化時代に向けて皆さまのニーズに確りお応えする商品であり、結果として信託財産残高としても大きく積み上がっておりますし、契約者数も増えております。柔軟性や機動性といった信託の特性を活かしながら、ニーズに確りお応えするものを作っていくことが役割だと思っています。一般的に、個人のお客さまは、これまで「資産形成層」、「資産運用層」と大きく分けられたりして来ましたが、「人生100年時代」になりますと、例えば75歳以上のお客さまを「資産承継層」として、その層の方々に対して金融や信託は何を提供出来るのか考えなくてはならないと思います。75歳以上の層の特徴は、健康や暮らしに不安がある、あるいは財産の管理やその承継に不安があるといった、資産運用層とは異なるニーズをお持ちです。また、家族との同居の状況や配偶者とどういう状況になっているかによってもそのニーズは変わって来るという特徴があります。そうした特徴や、まさに信じて託していただける財産には色々な種類があるという点を踏まえ、更にニーズに応える商品を作っていきたいと考えております。

日銀によるETF購入

問:
 金融政策に関してご意見をお伺いしたい。今、足下、株高が続いており、本日で13連騰になる可能性があります。一方で、日本銀行がETFを年間約6兆円購入し続けており、それが一定程度寄与しているとも考えられます。個別銘柄を見ると、かなり日銀の保有割合が実質的に高まっているものもあり、金融政策の功罪があると思われますが、その辺に対する会長のお考えを聞かせていただきたい。
答:
 まず、本日日経平均株価が13連騰いたしますと、バブル期の昭和63年2月に並びますが、この要因は、基本的には好調な企業業績であると考えております。この連騰した現状の水準であっても、日本企業の予想PERはまだ14倍程度であり、米国企業のPERが16倍から18倍程度と言われていることと比較すると、まだ上値を展開していく余地は十分にあると考えています。
 また、ご承知の通り、北朝鮮問題という地政学的な要因で本年8月に外国人投資家の買いが少し控えられましたが、9月にはそれが少し落ち着いたということ、また、選挙の前は株価が上昇することが多いといったことも手伝い、こういった状況にあると思います。
 日経平均株価自体が21年ぶりの高水準ということについて、色々な運用サイドの考えがあると思いますが、例えばこれまでストライクプライスを2万1,000円程度に置いていた場合、それを超えるということですから、次は2万3,000円程度に設定することも考えられます。そういったことも含めて、まだ十分に上昇余地があると思います。
 そして、そういう中で機関投資家は確りと日本株を購入していくこととなりますが、ご質問の日銀のETFの買い入れに関しては、金融緩和政策全体の出口戦略についての議論と一緒に考える話ではないかと考えます。

神戸製鋼所について

問:
 みずほ信託銀行の社長としてお伺いします。神戸製鋼所が、今、ああいった状況になっており、足元では資金繰りの心配は無いといった説明をされていると聞いておりますが、今の神戸製鋼所の状況をどう御覧になっていて、これからどういった点について注視していくのか、あるいは支援姿勢についてお伺いしたい。
答:
 本日は信託協会の会長の会見ということなので、個社として個別の取引先についての回答は差し控えさせていただきたいと思います。
 ただ、一般論といたしましては、昨今日本の大手製造業各社の品質に関する不祥事案が報道されておりますが、各社において、実態の把握、原因究明を徹底していただくこととともに、再発防止策を確り立てていただくということが何よりも大事であると考えます。

IMFによる国際金融安定報告書

問:
 メガバンクグループとしての質問になりますが、IMFの報告書の中で、日本の3メガバンクグループの収益性が低いことが問題だという報告が出ましたが、それに対する受け止めと、そこで問題視されたのは低金利だと思いますが、金融政策も絡めてお考えをお聞かせください。
答:
 IMFの「国際金融安定報告書」において、G-SIBsと呼ばれているグローバルに重要な金融機関のうちの約3分の1が収益性に不安があるといった書き方だったと思いますが、その中に日本の3メガが入っているというところが概要です。ただ、収益性の中には、その国の経済環境、すなわち金融環境が大きく影響を及ぼすケースもあるということでありまして、仰った通り、我が国は低金利ということで収益率が低いということが書かれていたと思います。本邦の3メガグループも、非金利収入の増強、あるいは海外事業の拡大といった施策を採っていくことによって、収益力を強化しているという認識です。国内の金利が低いことによる収益性の低さを指摘されているわけですが、それはグローバルな活動等による収益の多様化が進むことによって、確りとした対応がなされると考えています。1点、「国際金融安定報告書」について申し上げれば、我が国の3メガについてグローバル金融システムに今大きな悪影響を与えるようなことがあるのかというと、答えは「No」だと私は思っています。当然経営としては、収益性のみならず、健全性や安定性にも意を用いていくべきではないかと思いますし、リーマンショック後、あるいはもう少し遡って日本のバブル崩壊の時のような影響が直ちにあるとは考えておりません。

金融緩和の出口戦略

問:
 先程お答えいただいた「日銀のETFの買い入れというのは、出口戦略の中で考えること」というのは、もう少し時間をかけて考えれば良いという趣旨と受け取ったが、それについてもう少し教えていただきたい。また、株価が13連騰しているのは、基本的には日本企業の実力であって、過熱感やバブルということではないのか教えていただきたい。
答:
 まず、出口戦略と申し上げたのですが、皆さまもよくご存じの通り、出口戦略についてはまだ何も語られておりません。そのため、今、ETFの購入がどうかということは、あまり議論として相応しくないという意味で申し上げたのであります。
 次に我が国の企業のファンダメンタルズですが、これから中間期の数字が出てくると思いますが、企業業績は極めて好調でございます。前回の株価ピーク時である平成27年6月頃、ドル・円の為替が122円、123円という環境で、今と同じく企業業績が好調であったと思いますが、それに対し現在の為替相場が111円から112円であることを考えると、それだけ競争力がついている、ある意味、海外への生産シフト等が奏功しているとも考えられます。また、日本企業のPERの水準が14倍程度、米国企業の16倍から18倍程度という水準との比較においても、日本は買い遅れというような様相を呈しており、まだまだ上値を試す展開になるのではないかと思います。

パッシブ運用におけるエンゲージメント

問:
 パッシブ運用におけるエンゲージメントについて、パッシブはローコストで買うことができるというところに魅力があると思うのですが、そこでエンゲージメントをやってしまうとコストがかかってしまうのではないか。一方で、パッシブはアクティブと違ってダメな会社を売ることができないからエンゲージメントしなければいけない、という点についてはどのようにお考えでしょうか。
答:
 パッシブ運用におけるエンゲージメントは色々とテーマを絞りながらやっていきますので、当然、全社に対して実施するわけではありません。その業種・業界あるいはその事業のテーマのようなものを絞り込んでやっていくということであります。継続性においては定点観測的な意味合いもある。何れにしても大きくコストがかかるという認識はないということです。

議決権行使結果の個別開示

問:
 スチュワードシップ・コードによる議決権行使結果の個別開示について、概ね3信託横並びだったと思うが、理由の開示のところで特にみずほ信託銀行が若干見劣りするという印象を持った。どういった開示が適正なのかについては難しいところがあると思うが、そこについてはどういう整理、あるいは課題や反省点をお考えでしょうか。
答:
 これはみずほ信託銀行個社のこととしてお答えしたいと思います。
 先程申し上げたように、機関投資家と言われるところで、私たち信託銀行もそうですが、生損保や投資顧問といったアセットマネジメント会社などがございます。信託銀行について申し上げれば、当行が賛否理由をホームページ上に開示していないという点を仰っているのかと思います。スチュワードシップ・コードには、「賛否の理由を対外的に明確に説明する」とあります。そこの解釈の違いであると思います。私どもは、これをホームページに公表するか否かについて議論した中で、アセットオーナーに対して個別に丁寧に説明していくことをまず決めました。それから発行体に対しては、エンゲージメント活動の一環として、確りと理由を開示しながら対応していきます。そういったステークホルダーの方からのお問い合わせに確りとお答えしていくというものです。議決権行使結果の開示については、スチュワードシップ・コードで「公表すべきである」と記載されていますが、その賛否理由については「対外的に明確に説明する」といった表現でございます。その明確な対外説明という言葉をどう理解するかによって開示の仕方が違ってくると思います。実は、賛否理由については、ある意味では運用戦略の一環であるため、全ての方に公表すべき内容なのかといった議論もございました。
 但し、個別開示は今年から始めたところでございますので、今回の開示方法が最終形だと思っているわけでもございません。皆さまのご意見なども踏まえて、より良いもの、ステークホルダーの皆さまが「この方が透明性がより高い」と思われる方向に向けて努力していきたいと考えております。

以上

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