第88回信託大会(三菱UFJ信託銀行 若林社長)

2013年04月15日

当協会は、平成25年4月15日(月)、経団連会館において第88回信託大会を開催いたしました。

はじめに若林辰雄信託協会会長(三菱UFJ信託銀行社長)から、信託機能の活用による経済・社会への貢献、信託の担い手としての「受託者責任」の発揮について所信を述べた後、麻生太郎金融担当大臣、黒田東彦日本銀行総裁からそれぞれご挨拶をいただきました。

また、道垣内弘人東京大学大学院法学政治学研究科教授による「信託法理とその拡大」と題する講演を実施しました。

所信

一般社団法人信託協会は、「信託制度の発達を図り公共の利益を増進すること」を目的として大正15年に設立され、以来、一貫して信託制度の普及・ 健全な発展のための活動に取り組んできた。
これまでの間、信託制度は、社会からの期待、ニーズに応じた様々な機能を提供、発揮することにより、わが国の社会・経済の重要なインフラとして 発展を続けており、信託財産総額は750 兆円を超える規模に拡大している。

信託機能の活用による経済・社会への貢献

このように信託の存在感が高まる中、わが国は数十年に一度とも言える、変化の激しい時代を迎えようとしており、信託の機能を最大限活用して、社 会や経済の発展に一層貢献して参りたい。
新政権発足後、政府では日本経済の再生に向け様々な経済対策を検討されているが、中でも「民間投資を喚起する成長戦略」が大きな柱のひとつとなっている。
信託はこの成長戦略に対して、例えば、高齢者の持つ金融資産の世代間移転による消費意欲の向上や、民間資金を活用した社会インフラの整備といった施策により、様々な貢献が可能であると考えている。
そのひとつの事例として、祖父母等からの教育資金の一括贈与について贈与税を非課税にする措置が、緊急経済対策と税制改正大綱に盛り込まれ、3月末の関係法案の可決・成立で実現したが、この措置はまさに信託協会がこれまで長年にわたり要望してきたものである。
「教育資金贈与信託」としてこの4月から取り扱いが可能になっているが、この商品の意義は、高齢者から若年層への金融資産の世代間移転により消費活性化を促し、もって経済浮揚の一助とする、という点のみにあるのではない。
わが国が少子高齢化の急速な進行という社会問題を抱える中、若年層の教育や人材育成のサポートという社会的要請の面でも貢献する、まさに信ら しい商品である。
これは一例であるが、私どもは信託の特性を生かして、わが国社会・経済における諸課題に対応すべく、ニーズに合った新商品やサービスをタイムリーに提供し、また税制改正や規制改革の要望を積極的に提言していくなど、歴史ある信託の担い手として責任を果たして参りたい。

信託の担い手としての「受託者責任」の発揮

一方、このように信託の活用機会が増加する中、また社会の信託に対する期待が高まる中で、私ども信託の担い手が常に強く意識すべきことは、信託 は受託者に対する高度な信頼を前提に成り立つ制度であり、その受託者には、「受託者責任」が求められるということである。
私ども信託の担い手一人ひとりは、一般的な職業人として求められる健全な社会常識・倫理観はもとより、お客様の信頼に応える高い倫理意識堅持してゆかなければならない。
さらに、信託財産の管理・運用者として日々自己研鑽に努め、高度な専門性を発揮するとともに、変化の激しい環境下、種々のリスクに対しても思慮深く注意を払いながら業務を行なうことで信頼の向上に努めて参りたい。

講演「信託法理とその拡大」 [609 KB]

以上