会長就任記者会見(三菱UFJ信託銀行 池谷社長)

2016年04月06日

冒頭、振角専務理事より、本日開催された理事会において、信託協会の新会長に三菱UFJ信託銀行 池谷幹男取締役社長が互選により就任したこと、また、新副会長にみずほ信託銀行 中野武夫取締役社長が、新一般委員長に三菱UFJ信託銀行 長島巌常務取締役がそれぞれ就任した旨の紹介を行った。
また、第91回信託大会を4月11日(月)午後3時から経団連会館にて開催するので、記者クラブの方々にも是非出席いただきたい旨の案内および平成28年度の信託研究奨励金の募集を開始したことについての説明を行った。

会長就任の抱負

この度信託協会の会長に就任いたしました池谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
信託協会会長就任にあたり、抱負を2点申し上げます。

1点目は、信託制度の更なる普及、健全な発展に努め、社会・経済に一層貢献して参りたいということであります。
大正11年に制定された信託法が平成18年に全面的に見直されてから、今年の12月で約10年が経過いたします。 この間、遺言代用信託、後見制度支援信託、教育資金贈与信託等、少子高齢化・人口減少社会の到来に対応した、財産の保全・世代間移転に資する信託商品や、受益証券発行信託、信託社債等、信託機能を活用した金融商品を開発し、ご提供して参りました。
今後も引き続き、信託制度の持つ多様な機能・柔軟性を活用し、社会経済のニーズに対応した商品・サービスをご提供すべく、創意工夫に努めて参りたいと考えております。

2点目は、信託に対する信頼の確保に努めて参りたいということであります。
信託は、委託者及び受益者からの信頼に、受託者が誠実に応えることによって成り立つ「信頼」と「誠実」を基礎においた制度であります。
私ども信託の担い手は、お客様の信頼に応えるフィデューシャリーとして、法的義務を果たすことはもとより、高い倫理意識と専門性に基づいて、常にお客様のために誠実に行動することで、長い歴史の中で培われてきた信託に対する「信頼」の更なる向上に尽くして参りたいと考えております。

以下、質疑応答

マイナス金利と景況感

問:

マイナス金利が導入されてしばらくたつが、足元の株価も厳しい状況の中の景況感というか、現在の国内外の経済情勢についてどのように分析されているか、まずは最初にお聞かせください。

答:

グローバルな経済に関しては、綱引き状態というのが結論だというふうに申し上げたいと思います。その意味は、米国を中核とした先進国に関しては、堅調な経済の情勢がありますが、一方で、中国を筆頭に新興国の景気減速ということがございますので、まさに綱引きのような状態が、今のグローバルな経済情勢だと認識しています。もう少し掘り下げて申し上げれば、先日、上海で行われたG20において、各国で金融・財政を核とする政策を発揮して、中国をはじめとした新興国のリスクがあるという共通認識のもと、グローバルに景気の腰折れに繋がらないよう協調体制を整えていると認識しておりますので、そういう観点では、急速な腰折れというのはグローバルにはリスクが減少しているのではないかと、このように認識しています。
一方、我が国について申し上げると、先日発表された日銀短観において、景況感に関しての企業の見方が、若干弱含みになっているところがございます。けれども、これに関しては、国内での金融、これはマイナス金利の効果もあるでしょうけれども、一方で、昨今、安部首相が仰っておられるように、新年度の予算の前倒し執行といったような動きと併せて本格的な景気の下押しにならないような手立てを取られているという、そのような状況かと思っています。
株価は、昨今ではその時々の情勢でかなり大きく動く傾向になっており、今のところは短観の内容に反応しています。本日は小動きで小康状態になっているが、そういった景況感でございますので、しっかり金融・財政面など、様々な政策の発動を国内でも期待しながら注意深く見ていきたいというのが私の見方でございます。

問:

マイナス金利に関連して、日銀が先般MRFに関しては適用除外にする措置を採られましたが、この受け止めと、これ以外にも色々と要望されてきたかと思いますが、日銀に対してこれからどのような要望をされていくのか教えていただけますか。

答:

MRFに関しまして、私どもとしましては、良い結果が出たというふうに評価をしていますし、その理由については、「証券取引における決済機能に鑑み」と伺っておりますので、その観点では、適用除外になったことに関しては良かったと思っています。
一方で、今、ご質問にございましたその他のということで申し上げますと、この政策が発動されて以降、例えば、MRFも投資信託の一種ですが、それ以外の投資信託であるとか、私ども信託により密接ということで言うと、年金信託、このようなものに関しても適用除外のご相談を申し上げてきたところでございます。これに加えて、やはり、信託は様々な形で受託をしており、信託をしていただく目的があり、MRFは申し上げた証券取引における決済機能、これが信託の目的でありますが、同じような観点で適用除外に資する信託契約がほかにもあると思っています。そこは、今、整理をしているところですが、引き続き実態であるとかに関して丁寧に日本銀行さんと連携・ご相談を続けていきたいと考えています。

問:

為替が1ドル=110円を割り込み、株価も下げが続いているところで、一部には「アベノミクスが失速してきたのではないか」という声も聞こえていますが、その辺りについてはどのように捉えていらっしゃいますか。

答:

足元は、仰られるように、昨晩は110円を一瞬割るといったような状況が実際に起きたわけですが、確か、スタートした当初は、為替は80円台でしたし、株価は1万円に乗るか乗らないかといったようなところであったことを考えると、そういう観点でのアベノミクスの効果は、十分に発揮され、また発揮されている最中だと思います。
ただ、為替も株価も色々な要素で変動するものだと私自身認識しておりますし、為替に関しては非常に難しい見立てになろうかと思います。昨今で申し上げると、ドル安というところが今、要因になっているのではないかと思っています。やはり、これだけの経済規模の大きな米国でございますので、米国の利上げに関してイエレン議長がハト派的な発言をされて以降、ドルが軟調に推移していると、この影響が足元では一番大きい要素ではないかと考えております。株価は、日本の場合は、3月の決算の会社が数多くいらっしゃいますので、丁度、決算発表と次年度の業績予想が控える中、短観の内容等も含めて、どうしても悲観的な見方というのが多く見受けられる時期ではないかと考えております。

問:

マイナス金利の適用除外に関して、年金信託等についても、MRFと同じように適用除外を申し入れていたが、3月の段階で認められたのは、MRFだけだったという理解で宜しいのか。
また、年金信託以外でも適用除外を求めていった方が良いものとしてどのようなものがあるのか。

答:

マイナス金利発動以降、投資信託、年金信託に関しての適用除外もご相談していたというふうに認識しています。 
さらに、冒頭私が申し上げたのは、信託の中には資産を分別して管理するような機能もございますので、このあたりを、信託の目的に照らして除外をご相談するべきかどうかきちっと整理をして、必要に応じて対応していきたいと考えております。

問:

今後も、年金信託、投資信託に関しては申し入れというのを続けていかれるということなのか。あと、市場の現状を受けて、追加緩和の声も出てきていますが、その中で、黒田総裁は、「マイナス幅の更なる拡大ということも手の1つとしてある」ということを仰っていますが、そうなると、さらに影響が大きくなると思うのですが、その辺りのお考えをお聞かせいただきたい。
また、年金信託以外でも適用除外を求めていった方が良いものとしてどのようなものがあるのか。

答:

さらなるマイナス幅の拡大ということで申し上げると、総裁が必要に応じてと仰っている一方、私ども現場を抱えているという観点から申し上げると、状況の変化・推移をもう少し良く見て、その状況も合わせて日本銀行とよく連携していきたいと思います。
年金信託と投資信託に関しては、年金であれば老後の生活資金として、公的年金の補完になるわけですし、投資信託は、本格的にこれから貯蓄から投資へとなったときに核となる商品ですので、引続きご相談を申し上げていきたいと思っています。
実態をよく見ながら、私どもも足元で各運用機関、年金のお客さま等へのお願い事をしている最中でありますし、それを踏まえて、どのような動きになっていくかということはよく注視をしていきたいと思っています。

問:

一部の顧客、機関投資家にマイナス金利相当分の手数料をかけるということが先週分かりましたが、適用される顧客の数と金額はどのくらいを見込んでいるのか。
また、顧客に説明する際にどのような声が聞こえるかという点と、例えば資金流出とか、何か変化はあったのかという点をお聞かせいただきたい。

答:

今のご質問に関しては、本日は協会長としての記者会見ですし、協会ベースの数字はございませんので、三菱UFJ信託個社の数字として一部ご案内申し上げます。
手数料に関してご相談申し上げているお客様の数としては、一番数が多いのはやはり年金のお客様であり、約3,000程度。あとは桁が違い、例えば、投信会社であれば数十といった数字です。年金のお客様を中心に、数が多いので、今、丁寧にご説明を申し上げている最中です。
余資の金額は、正確には申し上げられないが、数兆円程度ということです。
また、お客さまの反応については、投信の運用をされている機関投資家、運用会社であれば、コールマーケットがこれだけ縮小したということに端を発している情勢はよくご存知であり、ご理解いただいています。年金は先程申し上げました通り、数が多いので、太宗はご理解いただいているのですけども、まだご説明が足りていないところもありますので、丁寧にご説明を続けている最中であります。
それを踏まえて何か資金の動きがあるかということで申し上げると、まだその段階にはなっていないということであります。

問:

確認ですが、先程の余資数兆円というのは、手数料の対象となるという理解で宜しいですか。

答:

そうです。

消費税増税

問:

国会では消費税増税を見送るべきではないかという声も出始めていますが、この点についてはどのようなご意見でしょうか。

答:

消費税増税に関しましては、やはり、社会保障に対する大切な財源であるということと、財政の健全化にも欠かせない策ということで、やはり導入すべきだと考えています。一方で、足元の景気等、政府も日銀も色々な手を打って景気の下折れリスクがないよう運営をされ努力をされているわけですから、その中でご決断をされるのだろうと思いますが、必要であるという観点に関して言うと、私はそのとおりだと思います。

fixed income市場における信託の活用

問:

会長はずっと年金運用のプロでいらっしゃるが、年金運用はやはり長い資産であり、どうしてもfixed incomeといった考え方で運用すべきと思うのですが、fixed incomeの世界というのは、日本で言うとJGBくらいしかない。例えば、fixed income市場を、信託を利用して、今後、日本でもう少し拡げていく取組みなど、何かそういったものはお考えでしょうか。

答:

信託商品としてということで申し上げますと、先程少しご紹介した受益証券発行信託であるとか、信託社債であるとか、信託の機能を活用した信託商品があります。ただ、これは、ご質問からすると、ロットの問題がかなり桁違いになってくるかと思いますけども。
一方で、こういう環境下で申し上げると、より一層、分散投資を図るというのが原則になってくると思います。そういう観点で、色々なキャッシュフローを生む商品、あるいは、キャピタルゲインをローリスクでも狙うという発想も当然出てきます。
そういう様々な種類のリターンの源泉を分散していくといった活動を、既にかなりの低金利でしたので、かねてより続けてきたのですが、そこに拍車がかかるというように認識しています。海外のfixed incomeをヘッジするのかしないのかといった選択肢も含めて、ご資金の性格に合った提案をしていくというところがやはり信託銀行としての務めだと思っておりますので、そこを引続き進めていきたいと思っております。

以上