第89回信託大会(みずほ信託銀行 中野社長)

2014年04月16日

当協会は、平成26年4月16日(水)、経団連会館において第89回信託大会を開催いたしました。

はじめに中野武夫信託協会会長(みずほ信託銀行社長)から、信託機能の発揮による経済・社会の発展・成長への貢献、信託に対する信頼の向上について所信を述べた後、岡田広金融担当副大臣、黒田東彦日本銀行総裁からそれぞれご挨拶をいただきました。

また、伊藤元重東京大学大学院経済学研究科教授による「日本経済の復活と信託への期待」と題するご講演を実施しました。

所信

一般社団法人信託協会は、「信託制度の発達を図り公共の利益を増進すること」を目的として大正15年に設立され、信託制度の普及・健全な発展のための活動に取り組んできた。
これまでの間、信託制度はわが国社会経済の重要なインフラとして発展を続けており、信託財産残高は昨年12月末には831兆円、過去最高水準となっている。

信託機能の発揮による経済・社会の発展・成長への貢献

このように信託が発展を続けている背景には、「信託」の特性、すなわち、「柔軟性に富み、新しいものを生み出していく力を備えていること」があると考えている。こうした信託の特性を活かし、信託機能を十分に発揮することにより、経済・社会の発展・成長に貢献すべく努力して参りたい。
具体的には、次の二点に取り組んでいく。

まずは、日本経済の持続的な成長に向けて信託機能を発揮することである。
現在わが国では、成長戦略をさらに進化させるための新たな取り組みが進められているが、本年1月のNISA導入を契機に加速が期待される個人金融資産の『貯蓄から投資へ』の流れを促進するとともに、老朽化したインフラの整備や震災復興、再生可能エネルギー等の分野において信託機能の活用を図ることにより、日本経済の活性化・成長に貢献して参りたい。
例えば、昨年4月より取り扱いを開始した「教育資金贈与信託」は、ニーズにかなった商品として多くのご支持をいただいており、世代間の資産移転による消費マインドの向上等の効果も期待されている。

次に、社会・経済環境の変化を背景とした社会的課題へ対応していくことである。
少子高齢化の進展などを背景に、「遺言信託」の利用が増加を続けているほか、財産をあらかじめお預かりして速やかな承継を可能とする「遺言代用信託」や、後見人を必要とされている方の財産管理をサポートする「後見制度支援信託」など、資産承継や財産管理に関する様々なニーズから、信託の活用範囲が一層広がりを見せている。
このような社会・経済環境の変化を背景としたニーズに対して、的確な商品・サービスを提供するとともに、コンサルティング機能も十分に発揮し、しっかりと対応して参りたい。

以上のような取り組みにおいてしっかりと成果をあげるため、われわれ信託の担い手一人ひとりが新たな信託領域の開拓や利便性の向上に向けて創意工夫に努めるとともに、信託協会としても税制改正や規制改革等の要望・提言を積極的に行って参る所存である。

信託に対する信頼の向上

信託は受託者に対する『信頼』を前提に、財産を移転し管理・運用などを任せる制度であり、受託者は「受託者責任」を誠実に果たすことが求められている。
信託機能の活用が多方面に広がっており、信託に対する期待が益々高まりを見せている中、信託の担い手である我々は、こうした期待に対して高い専門性でお応えしていくのはもちろんのこと、今日的目線に立ってより高度な「受託者責任」を果たすことによって、信託に対する『信頼』の一層の向上に努めて参りたい。

ご講演

「日本経済の復活と信託への期待」
東京大学大学院経済学研究科 伊藤元重教授

伊藤教授ご講演「日本経済の復活と信託への期待」 [494 KB]

以上