昭和100年関連特集

令和8(2026)年は、昭和元(1926)年から起算して満100年の年にあたります。この昭和100年をきっかけとして、昭和以降の歩みを次世代に遺すことや、昭和の精神に学び、日本の強みを再認識することは、大変重要なことであるとの考えの下、政府では昭和100年に関連する施策について積極的に取り組んでおり、民間においても多様な取組みの推進が期待されています。
当協会では、昭和100年関連施策として、信託業界の概況について、以下のとおりまとめました。
なお、信託協会は令和8年1月22日に創立100周年を迎えました。当協会の創立100周年ページもご覧ください。

信託業界では、今後とも信託の機能を一層発揮することで社会・経済に貢献していくとともに、信頼の礎となるお客さま本位の姿勢を徹底し、受託者責任を全うしてまいります。
また、令和7(2025)年3月に「信託業界のありたい姿(2050年に向けて)」を策定・公表しました。2050年に向けた業界の目的意識を共有するとともに、フィデューシャリー・デューティーの高度な発揮や時代の変化に応じた多様な信託商品・サービスの開発、信託の認知度向上による「信託業界のありたい姿」の実現に向けて、各主体が自律的・協働的に行う活動を一層加速していきます。

1戦前から戦後にかけての信託業界

明治39(1906)年4月に東京信託株式会社の設立をきっかけに各地に続々と信託会社が設立され、大正10(1921)年末には488社を数えるに至りました。しかし、その実態をみると信託業務の概念が未確定であったため、業務内容は極めて広範囲、雑多であり、また一部を除き、経営が不健全で資力・信用力に乏しい会社でした。信託会社と名乗るものの、大半は地方の無尽会社、貸金業者が看板を塗り替えただけというのが実態でした。
こうした中、信託に関する基本法規である信託法と信託会社に関する取締法規としての信託業法が大正11(1922)年4月に公布され、翌12(1923)年1月1日から施行されました。この信託2法の制定によって、昭和3(1928)年12月末には37社に整理されました。
昭和16(1941)年以降になると、戦時体制に対応するため、いわば国策的な要請に基づく信託業界の再編成が進みはじめました。さらに、戦禍の拡大とともに戦時経済の運営上、政府の統制下において金融機関の整理統合ならびに国民貯蓄の増強のための施策がとられました。その一環として、昭和18(1943)年には「普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼営等ニ関スル法律」(兼営法)が制定されて、普通銀行の信託兼営が可能となった結果、親銀行による系統信託会社の吸収合併が進められ、終戦時の信託会社は7社になりました。
終戦後は、インフレの昴進・戦災による個人資産の滅失などにより、信託業務は大きな打撃を受け、信託会社の経営は苦境に追い込まれました。信託会社の苦境を打開するため、連合軍総指令部の提案による銀行業務の経営でした。しかし、信託業法では、信託会社が銀行業務を兼営することを認めていませんでしたので、信託会社に銀行業務を認める法律上の手続きとして、信託会社の再建整備計画の申請書の中に銀行業を営むことを記載させ、この計画書の認可があれば、信託会社は銀行法上の銀行となり、いわゆる兼営法による信託業兼営が認められたものとみなされました。信託会社の再建整備計画は、昭和23(1948)年6月末日付で、同年3月末日に遡って認可されました。信託会社が銀行になることに伴い、名称を信託銀行に改めることなどが当局により勧奨されたことから、信託会社各社は社名変更の手続きをとりました。
昭和29(1954)年10月、戦中・戦後の混乱した金融制度を再建するため、行政当局は信託銀行の信託主業化と信託兼営の普通銀行から信託を分離する行政方針を打ち出しました。この結果、信託業務を行う銀行は信託銀行7行と信託兼営銀行1行となりました。

2各種信託商品・信託業務の誕生

戦後の復興需要を背景に昭和27(1952)年6月14日に貸付信託法が公布・施行され、貸付信託は高度経済成長期における産業界への長期安定資金の供給手段として、信託銀行を代表する信託商品となりました。
その後、信託銀行は、信託の財産管理機能を活かし、昭和31(1956)年の動産設備信託、昭和33(1958)年の証券代行業務、昭和37(1962)年の適格退職年金信託、昭和41(1966)年の厚生年金基金信託および従業員持株信託などの取扱いを開始しました。
日本経済は昭和40(1965)年の不況を経験した後、再び輸出主導の高度成長を回復しましたが、昭和40(1965)年代の後半に入ると経済成長のパターンは高度成長型から安定成長型へと大きく変化し、政策の重点も産業優先から国民福祉の向上へと転換することとなりました。また、所得水準の上昇に伴って、国民のニーズが多様化し、生活関連の社会資本の充実や福祉の向上を求める声が高まってきました。このような経済社会の構造的な変化や国民の意識の変化に伴う社会のニーズに対応して、信託銀行はさらなる信託商品・信託業務の開発に力を入れました。
昭和46(1971)年の貸付信託法の一部改正により、貸付信託の資金は資源の開発その他緊要な産業向け貸出しから、産業構造の変化、資金需要の多様化に対応して、中堅・中小企業向け貸出しや住宅ローンなど広く国民経済の健全な発展に役立つ分野への資金運用ができるようになりました。さらに昭和52(1977)年の自動継続の取扱い、昭和56(1981)年には信託総合口座の取扱い開始、月2回設定の取扱い、収益満期受取型貸付信託「ビッグ」の取扱い開始などの改善が行われました。
また、昭和47(1972)年に財産形成信託の取扱いが開始され、その後、政府の勤労者財産形成施策の拡充にともなって、昭和50(1975)年の財産形成給付金信託、昭和53(1978)年の財産形成基金信託、昭和57(1982)年の財産形成年金信託、昭和63(1988)年の財産形成住宅信託の取扱いが開始されました。これにより、信託銀行は年金信託や従業員持株信託などとあわせて、さらに勤労者福祉の向上に寄与することとなりました。
さらに、国民福祉の向上に寄与するため、昭和50(1975)年の特定贈与信託、昭和52(1977)年の公益信託の取扱いを開始しました。
証券市場の発展と国税庁から出されたいわゆる「簿価分離通達」(昭和55(1980)年)をきっかけとして、昭和56(1981)年頃より有価証券運用を目的とするファンドトラスト(ファントラ)や特定金銭信託(特金)の取扱いが急拡大しました。
一方、高度成長期を経て家計や企業の資産蓄積が進む中で、より専門的な財産管理サービスへの需要が顕在化し、信託業務も多様な形態と新たな展開を示すようになってきました。昭和59(1984)年に取扱いが開始された土地信託のようにものの信託が登場することになりました。

3信託の担い手の拡大

昭和59(1984)年5月の「日米円・ドル委員会報告書」および大蔵省「金融の自由化及び円の国際化についての現状と展望」が取りまとめられ、外国銀行による信託業務への参入が認められました。この方針に従って、外国系銀行の信託参入が行われることとなり、9行が参入することとなりました。
長年にわたる論議を経て、金融制度調査会答申「新しい金融制度について」や証券取引審議会報告書「証券取引に係る基本的制度の在り方について」が取りまとめられ、これらの答申・報告書を受け、「金融制度及び証券取引制度の改革のための関係法律の整備等に関する法律」が平成5(1993)年4月1日に施行されました。この法律は、従来の縦割りの金融制度を包括的に見直し、各種金融機関間の相互参入による金融・資本市場における適正な競争の促進を通じた利用者利便の向上、金融・資本市場の効率化、活性化を図るものであり、銀行法、兼営法、証券取引法など金融関係の16の法律の改正を盛り込んだ広範な内容を持つものでした。
これにより、業態別子会社による各業務への相互参入が認められ、信託業務に関しては、地域金融機関による本体参入もあわせて認められました。
信託銀行子会社については、平成5(1993)年8月に信託銀行5行が設立され、信託業務の取扱いを開始しました。また、地域金融機関による信託業務の兼営は、地方銀行19行が兼営法による認可を得て信託業務の取扱いを開始しました。
平成16(2004)年12月30日に施行された全面改正された信託業法では、信託会社も信託業務を行うことができるようになり、平成17年中に信託会社4社が信託業務の取扱いを開始しました。
その後も信託兼営金融機関の認可や信託会社の設立等により信託の担い手が拡大しています。

4時代のニーズに合わせた信託商品の開発

平成16(2004)年12月30日に施行された改正信託業法では、金銭、金銭債権、土地およびその定着物、有価証券、動産、地上権および土地の賃借権に限定されていた信託財産が知的財産権などを含む財産権一般に拡大されました。これにより知的財産権の信託や排出権の信託などの取扱いが開始されました。
大正11(1922)年に制定された信託法が84年ぶりに抜本改正され、平成19年9月30日に施行されました。新信託法では、受益証券発行信託、目的信託、事業の信託、遺言代用信託、後継ぎ遺贈型の受益者連続、限定責任信託、自己信託といった新たな類型の信託もできるようになり、取扱いが開始されました。
平成23年度税制改正要望において特定寄附信託制度が実現したことを踏まえ平成23(2011)年1月から「特定寄附信託」の取扱いを開始しました。
最高裁判所において、平成23(2011)年2月に信託制度の機能を活用して後見制度を財産管理面で支援するものとして「後見制度支援信託」の仕組みが取りまとめられ、平成24(2024)年2月から取扱いを開始しました。
平成25年度税制改正で措置された教育資金の一括贈与の贈与税非課税措置の創設を受け、平成25(2013)年4月から「教育資金贈与信託」の取扱いが開始されました。
平成27年度税制改正で措置された結婚・子育て資金の一括贈与の贈与税非課税措置の創設を受け、平成27(2015)年4月から「結婚・子育て支援信託」の取扱いを開始しました。

(参考1)信託業界のあゆみ

年代 主な用途・機能 代表的な商品
1950年代
(昭和25年~)
貯蓄手段 金銭信託、貸付信託(2000年代に取扱終了)
1960年代
(昭和35年~)
企業年金(※) 適格退職年金信託(2012年3月廃止)
厚生年金基金信託(2014年3月新規設立停止)
1970年代
(昭和45年~)
公益・福祉 特定贈与信託
公益信託
1980年代前半
(昭和55年~)
有価証券運用・管理 証券投資信託
ファンドトラスト
1980年代後半 都市開発・有効利用 土地信託
1990年代
(平成2年~)
企業財務 金銭債権の信託
資産流動化信託
退職給付信託
株式交付信託
2000年代
(平成12年~)
倒産隔離・資産保全 顧客分別金信託
資産保全信託
2010年代
(平成22年~)
財産管理・保全
資産承継
遺言代用信託
特定寄附信託
後見制度支援信託
教育資金贈与信託
結婚・子育て支援信託

(参考2)信託財産の推移

グラフ:信託財産の推移

(注)資産流動化信託の計数は、2000年度末までは金銭債権の信託の計数。

関連サイト

金融庁「昭和100年」関連施策 特設ページ