若林会長定例記者会見

平成26年03月20日

冒頭、上野専務理事より、教育資金贈与信託の受託状況について、本年2月末現在の契約数が61,954件、信託財産設定額合計額が4,135億円となり、それぞれ6万件、4千億円を突破したことの報告があった。

1年を振り返り

昨年4月の協会長就任からまもなく1年が経過いたします。 この間の皆様のご支援に深く感謝するとともに、心より御礼申し上げます。 本日が信託協会長として最後の会見となりますので、この1年間を振り返った感想などを、お話しさせていただきたいと思います。

私は就任にあたり、所信の1点目として、「信託の機能を最大限活用して、社会や経済の発展に一層貢献していきたい」と申し上げました。
  昨年4月から取り扱いを開始した、「教育資金贈与信託」はその一例でありまして、高齢者の金融資産を次世代に移転することで消費を活性化し、経済浮揚の一助とすることを狙いの一つとしておりました。
  おかげさまで、先ほど上野専務理事からお話しがありました通り、お客さまから大変ご支持をいただいておりまして、一定の貢献ができているのではないかと思っております。
  今年度はこの所信に込めた思いに沿って、少子高齢化問題を踏まえ、若い世代に経済的支援を行うための信託や、個人金融資産から社会インフラ整備への投資をうながすための信託を関係省庁等に提案いたしました。
  昨年12月に「金融・資本市場活性化有識者会合」から示された「提言」におきましても、課題のひとつ目に“豊富な家計資産と公的年金等が成長マネーに向かう循環の確立”が挙げられております。
  信託の機能をその課題解決の一助とするために、「教育資金贈与信託」の非課税措置の恒久化を要望していくとともに、引き続き知恵を絞って新商品や新サービスの提案を行っていきたいと思います。

また規制改革の一環として、金商法の府令改正により、後見制度支援信託や遺言代用信託などの商品を信託代理店で取り扱えることになりました。
  これは当協会の長年に渡る要望を実現していただいたものですが、これらの商品も少子高齢化の進展につれてニーズが高まっていくと思われることから、普及に向けて関係各位と検討を進めてまいります。

次に、所信の2点目として、「信託の担い手として受託者責任を発揮していきたい」と申し上げました。
  これについていくつかお話しいたします。
  まず、「日本版スチュワードシップ・コード」の策定ですが、当協会からも有識者検討会に参加し、この3月にコードが公表されました。
  今後は機関投資家に対して、このコードに沿った具体的な行動が期待されるわけですが、私どもも日本を代表する機関投資家として、積極的に取り組んでまいります。

また、今年度は提携ローンにおける反社会的勢力問題がクローズアップされた年でした。
  当協会としましては、従来から反社会的勢力との関係遮断につとめてきておりますが、今回の事案を受けて、全銀協はじめ関係組織との連携をより一層密にして、新たな取り組みを加えながら関係遮断を徹底してまいります。

また、当協会では受託者責任にかかる基礎研究として、英国や米国の受託者責任、すなわちフィデュシャリー・デューティーに関する最新の研究や議論について調査し、会員会社への還元を行っております。
  弊社、個社の話としましては、米国の信託法研究者であるタマール・フランケル教授の『フィディシャリー・ロー』という書籍の研究チームを社内に組成し、信託法学会の先生のご助力もいただきながら、この3月26日に翻訳本を刊行することとなりました。
  引き続き、信託業界をあげて基礎研究にも注力していく所存です。

以上がこの1年間の簡単な振り返りになります。
  これまで申し上げた取り組みや成果は、当協会の活動に関係するすべての皆様のご尽力の賜物でありまして、あらためてこの場で御礼を申し上げます。
  会長会社の務めは、4月にみずほ信託銀行さんに引き継ぐこととなりますが、今後とも信託協会の活動に対して、一層のご理解、ご支援いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

以下、質疑応答

教育資金贈与信託

問:
 教育資金贈与信託の受託状況が非常に好調とのことだが、好調である背景と、今後の受託の先行きや課題について伺いたい。
答:
 先ほど計数をご紹介しましたが、1年で件数にして約6万2千件、金額で約4千百億円超に積み上がっています。資料のグラフでお示しするとおり、一貫して右肩上がりで伸びてきております。
 この制度は、教育を通じた人材育成と消費拡大による経済活性化という社会的意義に加えて、非常に大事なのが、主に祖父母から孫への思いを形にできる商品であることが高いご支持をいただいている理由と思っています。この先の受託件数の伸びについては、これまでの経緯や日々のお申込み状況をみると、今後も堅調に伸びていくものと期待しております。
 特に、経済活性化という面では、2月末の時点でお預かりした金額の4,135億円のうち、150億円が既に引き出されて、実際に教育関連費用として支払われております。これをよく考えると、祖父母から贈与を受けた親権者の世帯の家計が150億円分、少し余裕ができたということでありますので、教育に150億円消費されるとともに、余裕ができた150億円は教育以外に、例えば食事や旅行などにも使われているとも思いますので、150億円が消費の面で2倍の効果を発揮しているのではないかと思います。
 3年の時限立法ということでありますので、この先あと2年あります。この1年ですでに4千億円近く受託しておりますので、単純に計算すると1兆円を超え、この金額がどのぐらいの期間で教育費として消費されるかは、なかなか想像が難しいのですが、少なくとも向こう30年の間には、この1兆円が着実に消費されると想定すると、先ほど申し上げましたようなロジックで、効果は2兆円ぐらいになるのではと期待できます。消費を刺激して景気の浮揚に貢献するという意味においては、大変社会的意義のある商品だと、嬉しく思っております。

景況感

問:
 景気全般のことですが、金融緩和措置から1年が経つタイミングで、まもなく消費税率も引上げられ、このような中で海外リスクも懸念されるが、先行きの景気の認識と見通しを伺いたい。
答:
 足元、消費税の引上げを睨んだ駆け込み需要で、今朝のニュースでも報道されていた薄型テレビが今までにないペースで売れているというようなことがありますが、やはり4月を過ぎて消費税が上がると、反動減は避け難いのではないかと思います。したがって、一時的にスローダウンするかもしれませんが、13年度の補正予算で様々な下支えの策が講じられていますので、景気の腰折れというものは回避できるのではないかと思っています。夏場以降は米国向けの輸出が更に拡大されて、景気は上向きになるのと同時に、税負担増により家計は少し消費を抑制していく方向に向かうので、成長率はそれ程高くならないのではないかと思います。
 日銀の政策としては、そうした物価の緩慢な伸びを勘案して、引き続き緩和基調の政策が継続されると思っております。
 足元はご存知のとおり欧州の地政学的リスクが存在し、エネルギーコストの上昇等に繋がる可能性も否定できませんので、注視していきたいと考えています。

ベア、賃上げ

問:
 ベアについて、各メーカーやメガバンクなどもベアに前向きな方向と伝えられていますが、信託業界に関しては、どのような見通しとなっているか。
答:
 ベア、賃上げというのは個社の事情によるものだと思いますので、信託協会として特段のコメントはありませんが、三菱UFJ信託個社として申し上げれば、やはり今日本が置かれている経済の状況、デフレを脱却しなければいけないという、これは国民的課題であり、大手金融機関或いは企業市民の一員として、何らかの役割を自分たちの実力の範囲の中で果たしていかなければならないと考えています。わが社はまだ組合からの要求が正式には出てきていませんが、4月の上旬には出てくると思っていますので、ベアの要求が出てくれば、私ども個社としては真摯に受けとめて、なるべく要求に応えられるように前向きに取り組みたいと考えています。

相続税

問:
 来年1月に相続税法が改正されるが、信託銀行にとってどのようなビジネスチャンスと考えたらよいのか、一般論を含めて、信託業界にとってどのような影響があるのか、その対応はどのように考えているのかを伺いたい。
答:
 ご存知のように信託銀行をご利用いただくと、先ほどの教育資金贈与信託のように贈与税が非課税となり、相続財産を法律に則ってきちんと減らせるという効果が生まれ、ビジネスが順調に伸びているというのが一つの事例であります。加えて、相続税等の変更によって、自分は法定相続の範囲内で相続税を払う必要がないと思っていた方が、不動産の評価が非常に高いところなどにお住まいになっていると、あてはまらなくなる状況に直面される方も多いと思います。そういった方々にとっては、信託業界として、不動産仲介をはじめ不動産に関わるさまざまなソリューションのご提供ができることから、ビジネスチャンスは更に広がるのではないかと思っています。

厚生年金基金制度の改正

問:
 厚生年金基金の解散が少しずつ広がっており、4月に改正法が施行されるが、信託業界としての影響、その対応について伺いたい。
答:
 昨年の6月26日に改正厚生年金保険法が公布されて、一定の基準を満たす厚生年金基金のみが、法施行から5年後以降も存続できることになっています。信託協会としては、各厚年基金の意向を踏まえつつ、その運営や制度を変更する場合の実務的な調整、課題整理等をお手伝いして、厚生労働省への働きかけを行って参りましたが、今後とも厚生年金基金の意向に沿ったサポートを協会あげて行って参りたいと思っています。
 わが国の社会保障制度においては、少子高齢化の進行による公的年金の縮減が見込まれており、企業年金の役割が、今後更に大きくなると考えておりますので、協会としては、今後も、企業年金、ひいては国民の生活を支える視点から、社会のために信託が出来るソリューションは何かということについて、行政等の関係者とも協議・検討して、信託に寄せられている期待に引き続き応えて参りたいと思います。信託のビジネス自体に与える影響も、それなりにありますが、これは各社毎に影響度合いが違うので一概には申し上げられませんが、信託協会としては、顧客のニーズに応えるために厚年基金の制度から他の制度への移行をしやすくするような措置や、確定拠出年金や確定給付企業年金など各制度の使い勝手をよくするような措置を講ずるよう働きかけを行ってきていますし、今後も引き続き行ってまいりたいと思います。

遺言代用信託

問:
 先程、お話があった遺言代用信託の規制緩和であるが、今後の需要拡大の可能性、或いは伸びしろについて伺いたい。
答:
 遺言代用信託というのは、遺言の代わりに信託を用いて委託者が死亡した後、予め指定した配偶者や、お子さんを受益者として給付を行うというものであり、19年施行の新信託法で整備されたものです。高齢化が進んでいく中で、老後に財産を計画的に使いたい、或いは相続を円滑に行いたいというニーズが非常に増加しており、そのようなニーズを充足できる遺言代用信託については急速に受託実績が伸びています。
 個社の話で言えば、商品名は「ずっと安心信託」ということで、平成24年から取扱いを開始していますが、今年の2月末で件数が5万1千件超の申込み、それから金額で2,200億弱の申込みがあり、やはり相続絡みのニーズが高いと実感しています。
 高齢化が益々進展していくわけですが、それに加えて相続税の見直し等がある中で、将来の資産承継や資産の円滑な相続といった老後の不安に応えるニーズがどんどん高まっていくと思いますので、当社としても引続き販売を拡大していきたいと考えています。

証券および不動産市況

問:
 会長は、昨年、マーケットがこのまま株高、債券高が続くということなかなか考えにくく、マーケットが歪んでいるといったことを言われたが、その辺の歪みというところを今、どのようにご覧になっているのか。
 また、不動産などはファンダメンタルを超えた期待先行で、バブルではないがその予兆があるのかどうか。
答:
 昨年のコメントについては、見事に外れたということです。非常に今、官民あげてデフレ脱却ということで日本経済を浮揚する方向に一丸となって進んでいるものと思っています。
 2点目の不動産市況ですが、不動産の投資マーケットというのは上場のJリートが有力な買い手となっていて、暦年ベースの2013年では2兆3千億円ほど取得していますが、これは前年比の約3倍に値し、2006年とほぼ同水準のところに達しています。投資家は足元、引続き投資に非常に意欲的であり、地価は、先日の地価公示の発表にあったように、上昇している地点が非常に増えております。
 これは、当社個社のヒアリング結果ですが、2013年の後半にプライベートファンドが物件を売却した際、売った方の6割近くにキャピタルゲインが発生しているという調査結果が出ています。あとは、住宅、主にマンションですが、これは引続き需要はコンスタントにあることから価格に先高感があり、購入意欲も非常に旺盛であります。ただ、一方で、マンション素地の取得が非常に困難になってきている状況にありますので、この状況が続けば、まだ少し高めに推移していくのではないかと考えています。
 今後の見通しですが、2014年の取引量は、先程申し上げたように素地を取得しにくくなっている状況もありますので、全体としては前年よりは減少するかもしれませんが、水準自体は非常に高いところで推移するのだろうと思っています。優良物件については取得競争がまだまだ緩むという状況にはなく一層激しくなり、特に価格の上昇の割合が高いと考えています。ただ、実体経済を過度に先取りした不動産価格の急激な上昇というのは、その後の副作用も非常に大きいので、ここは注意深く取り組む必要があるのではないかと考えています。

貯蓄から投資への流れ

問:
 ここ1〜2ヶ月、株式マーケットの方で足踏み状態が続いている。今週も日立マクセルとかジャパンディスプレイが上場してかなり悪かった。個人投資家の動きとしてNISAなどで投資を促しているが、貯蓄から投資へという流れというのは実際にはどうなのか。本当に進んでいるのか。
答:
 NISAについて言えば、口座の開設の件数は、個社の事例で申し上げると相当な勢いで増えています。一方で、各社によって事情が異なると思いますが、稼働率の面では、口座は開いたけれども、お金を振り込んで実際に利用しているのかどうかを見ると、まだまだ2割程度ではないかというのが実感です。
 従って、貯蓄から投資へというプラットフォームは想定どおり出来上がりつつあると思いますが、それがきちんと利用されて、本当の意味で貯蓄から投資へという流れが大きく始まったかどうかというのはまだ少し見極めが難しいかと思います。
問:
 それは、政府からの政策の明確化とか、何が一押し足りないと考えているのか。
答:
 NISAの口座を開設して実際に運用される方のタイプは、おそらく2種類あると思います。今まで投資経験がない、このような少額投資の非課税制度ができたから、これを機会に口座を開設して運用を勉強してみようと、ただ、あまりリスクは取りたくないといった初心者タイプの方が利用されるケースと、500万円で勝負しようとか、かなり投資慣れした方、経験豊富な方、このような方の傾向としては、株式を中心にアクティブに運用されるタイプがいらっしゃると思われます。このあたりは証券会社の方が良くご存知だと思いますが、おそらく二極化しています。これは息の長い話で、金融機関ごとに提供する商品が違うので、提供商品に応じた投資教育というものを時間をかけて行い、その制度の利用率を高めていってようやく貯蓄から投資へという流れの後押しができるのではないかと現時点では思っています。

教育資金贈与信託

問:
 教育資金贈与信託について、まず、2月の数字を見ると、月ベースで2番目の水準と解釈できるが、それはある程度需要は取りつくしたということか。今後、贈与税の見直しもあるので、また、この数字というのは伸びていくのか、そのあたりはどうか。
答:
 それは、引続き伸びていくと思います。2月、8月というのは一般的に商取引が低調になるとの言い表しもありますので、その影響もあるかと思っています。
問:
 教育資金贈与信託で、信託を今まで利用していなかった人達が信託の世界に入ってくることが当初期待されていたと思うがどうか。
答:
 個社の事例で申し上げると、申し込まれた顧客のうち半数が新規のお客さまです。
 今までわが社と全く取引がなかったお客さまが半分いらっしゃるということは、このような商品に対するニーズがそもそも強くて、それをたまたま信託銀行が中心となって提供しているということで来られたと思います。
問:
 半数を占める新規の顧客は、教育資金贈与信託以外の取引というのはどうだったのか。
答:
 今まで全くありませんでしたが、徐々に他の取引が始まっていくという傾向も確認できています。

金融政策

問:
 黒田総裁の就任から1年が経ったが、1年を振り返ってどうか。
答:
 個社として申し上げますが、円安株高の傾向が黒田総裁ご就任以降続いており、家計や企業の景況感は1年前と比べると大きく改善していると思っています。また、生産や輸出も回復の兆しを見せ始めるということで、着実に好転していると思いますし、これは安倍政権と日銀による経済政策、金融緩和政策によるデフレ脱却への期待感と政策の効果がじわじわと実体経済に反映し始めていることが主な原因ではないかと考えていますので、結論としては評価しています。

資金需要

問:
 景気は回復してきているということだと思うが、足元の資金需要というのはどのように考えているか。
答:
 国内は設備関係の資金需要というのは、徐々に出てきています。ただ、今までは大型M&Aとかアジアでの事業展開とか、 イベントファイナンスと言われるようなものが中心となって貸出の伸びを支えてきたわけですが、今後もそのような傾向は続くのだろうと思っています。景気の堅調な回復が国内で更にコンセンサスとして見込まれるようになれば、設備資金とか運転資金といった本来的な資金需要が今後増加していくのではないかと思っています。

以上

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