池田会長就任記者会見

平成19年04月04日

冒頭、新原専務理事より、本日開催された理事会において、信託協会の新会長にみずほ信託銀行 池田輝彦取締役社長、新副会長に三井トラスト・ホールディングス 田辺和夫取締役社長が互選され就任した旨、また、新一般委員長にみずほ信託銀行 田川誠常務取締役兼常務執行役員が就任した旨の紹介があった。

続いて、第82回信託大会を4月16日(月)午後3時から経団連会館にて開催し、山本金融担当大臣と福井日銀総裁からご挨拶をいただくほか、法制審議会信託法部会の部会長で東京大学大学院の能見教授に「新信託法と信託の発展方向」と題する講演をお願いしており、引続き懇談の席も用意しているので、記者クラブの方々にも是非出席していただきたい旨案内があった。

また、平成19年度の信託研究奨励金の募集の開始について、配布したポスター等を用いて説明があった。

会長就任の抱負

このたび、信託協会会長に就任いたしました池田でございます。よろしくお願いいたします。就任にあたっての抱負を三点ほど申し述べたいと思います。

第一は、「信託法改正による信託への期待の高まりに、積極的に応えていく」ということであります。

信託を利用した金融商品が様々な分野で定着していることにも現れているように、信託は、多様なニーズに対応する仕組みを作り出すことが可能であり、現代社会でも幅広く利用されています。信託財産の総額は、今や700兆円を超える規模にまで拡大し、わが国の金融商品の中でも重要な役割を占めています。ご高承の通り、昨年12月、84年ぶりに信託法が抜本的に改正されました。今般の改正では、「受託者の義務の合理化」、「受益者の権利行使に係る規律の整備」、「新たな類型の信託制度の創設」等が行われていますが、これらの改正は、信託の利用可能性を更に拡大させるものと考えています。このことは、信託業の担い手に対する期待が一層高まることを意味しています。私どもは、その期待に応えるため、より高度な専門性の発揮と創意工夫に、果敢に取り組んでいく所存です。

第二は、「信託制度の健全な発展のために、引き続き努力していく」ということであります。

信託の本質は、委託者および受益者と、受託者の間の、高度な信頼関係を基礎とするもので、この本質は、新しい信託法の下においても何ら変わるものではありません。信託制度の健全な発展のためには、受託者の信頼性が、これまでにも増して重要となります。私どもは、その重要性を深く認識し、委託者、受益者に対する責務を果たしていく所存です。「貯蓄から投資へ」の流れが本格化している現在、新しい信託制度に対する注目は飛躍的に高まっています。これからの時代は、まさに、「信託」の真価が問われる時代であると言えます。新しい信託法の元年にあたる本年、私どもは、今一度、信託の本質に立ち返り、その理念を体現すべく、更に、努力していかなければならないと、決意を新たにしているところです。

第三は、「信託機能の発揮により、新たなる成長へ貢献していく」ということであります。

今年度以降、さらなる信託業法の改正や、公益信託制度の見直しが予定されています。信託業法の改正では、高齢者や、障害者の生活を支援する、所謂、福祉型信託等の検討が行われる予定になっています。また、公益信託制度の見直しでは、現在の制度を、先行して改革された公益法人制度と、整合性のとれたものにする必要があります。私どもは、これまで長年にわたり培ってきました実務上の経験を踏まえ、これらの改正、見直しに対し、積極的に提言していきたいと考えています。また、多様な資金調達を可能とする資産流動化や、近年、関心が高まっている知的財産権の信託等についても、お客さまに、引き続き、高度な信託機能を提供してまいります。更に、信託法改正により、「個人の財産承継に資する、新たな類型の信託」等が創設されていますが、これらの開発を積極的に進めることにより、わが国経済の新たなる成長と、豊かな高齢化社会の実現に貢献していきたいと考えています。

以上、信託協会長就任にあたりまして、三つの抱負を述べさせていただきました。

少し付言させていただきますと、私は普通銀行の出身でありまして、3年前の2004年に初めて信託の世界に飛び込んだ訳でありますが、知れば知るほど信託の奥深さ、その利用可能性の大きさを実感しています。そして、信託はもっと活用される、そして信託の存在感はますます高くなる、と考えています。元信託法学会理事長の故四宮和夫教授は、著書「信託法」で「信託はどのような目的のためにも設定されることが可能である。それを制限するものがあるとすれば、それは、法律家や実務家の想像力の欠如にほかならない。」と書かれています。私は、お客さまからの「信頼」をベースに、利用可能性を無限に持つ「信託」は、まだまだたくさんの分野で活用出来ると確信しています。信託協会の目的である「信託制度の発達を図り、公共の利益を増進すること」を実践していくため、私は、あらゆる機会を通じて信託の機能をアピールしていきたいと思います。ただ、今申し上げましたことは、いずれも協会長一人で成し得るものではありません。また、弊社は平成5年以来14年ぶりの会長会社就任となります。是非とも、協会加盟会社各社、そして関係者の皆さまのご協力を賜わりたいと願っております。

最後になりますが、新しい信託法の下で、社会における信託の存在感を確固たるものにするには、信託に携わる者全員が、信託制度の更なる普及、健全な発展に向け、切磋琢磨していくことが大切であると考えております。

引き続き信託協会の活動に対しまして、ご理解、ご支援いただきますようよろしくお願いいたします。

信託法改正

問:
今年夏に施行される信託法についてであるが、施行されることによって、具体的にどのような商品やサービスが提供されることになるのか。ひいては、国民の生活にどのような影響があるのかお伺いしたい。
答:
信託というのは、なかなか皆さんにご理解いただけない面がある。目に見える信託のスキームを使った金融商品は比較的わかりやすいが、その他にも、例えば、皆さんの会社では年金の積立をしていると思うが、我々はその積立金の管理運用を年金信託として受託している。また、投資信託においては有価証券の管理業務等をやっている。このように、目に見えないものも含めて、信託は経済の重要なインフラを担っており、その結果として、信託財産の総額は700兆円を超えている。私が2004年にみずほ信託銀行の社長に就任した際には500兆円弱であった。この3年で200兆円増、約 40%伸びている。2004年12月に信託業法が改正され、今般の信託法改正とあわせてようやく新しい信託法制が整ってきた。2004年12月の信託業法改正では、受託可能財産の制限が撤廃され、知的財産権の信託や排出権の信託など新しい信託商品が出てきている。また、担い手が拡大され、新しく信託会社が 12社設立されており、代理店制度の拡張により代理店数もかなり増えている。これに加えて、今般の信託法改正によりいろいろな規律の整備であるとか、あるいは新しい類型の信託の創設も可能になったので、そういう意味では、皆さんのお役に立つような信託商品やサービスの提供ができるのではないかと考えている。ひいては、それがわが国の経済や国民生活の向上に資するものになるのではないかと考えている。

M&A

問:
敵対的買収、M&Aについてであるが、外→内とか、内→内とか、急増している。信託業界は現状、どのような取組みをされているか。また、今後、企業側のニーズに応えるための課題はどうか。
答:
M&Aは、経済のグローバル化の進展の中で、世界的な潮流であると思う。我々としては、例えば、M&Aコンサルティングを担っているし、また、専門分野では、株式実務、証券代行業務等で株主名簿の作成や管理、あるいは株主総会運営に伴うお手伝いをさせていただいている。企業買収防衛ということでは、信託型ライツプランなどいろいろな防衛策について提案もしている。実際に売買執行の段階になると、資産評価のところで不動産鑑定業務が発生したり、年金制度の統合や分割といったお手伝いもある。これから信託法改正により事業信託ができるようになると、さらにお手伝いできる場面が多くなるのではないかと考えている。
問:
5月の三角合併の解禁によって、外→内のM&Aは増えると考えるか。
答:
先ほど述べたように世界的な潮流であり、各企業も、いろいろな形態のM&Aを考える時代になったのではないかと思う。

日本経済の見通し

問:
3月の日銀短観で景況感が1年ぶりに悪化したとか、先行き厳しい見方が出てきているが、日本経済の当面の先行きの見通しについて伺いたい。
答:
一昨日の日銀短観でもあらわれているように2月末の世界同時株安や円高進行などで一時的に景況感が下振れしたが、それも予想の範囲内という気がする。直近のニューヨークや東京のマーケットを見ると、一時的な調整の動きだったという感じがする。基本的には、企業業績は堅調に推移しており、来年度も増益になるだろうという予想が出ている。これに伴って、設備投資意欲もまだまだ旺盛であるし、あるいは雇用の逼迫、所得の増加も含めて、個人消費も上向いてくると思う。全体的には緩やかな回復が持続するのではないかと思う。

利上げの時期

問:
3次利上げの時期の見通しについて伺いたい。
答:
日銀が適時適切な判断をすると思う。

信託法改正

問:
今後の信託業法の改正の焦点は何か。
答:
先般の信託法改正にあたり、福祉型信託の検討についての附帯決議があり、今後の信託業法改正では高齢者や障害者の生活を支援する福祉型信託の検討が行われる予定である。なお、福祉型信託というのは、現在でも取り扱っており、例えば、障害者の生活支援のための特定贈与信託、生前贈与とか死後の財産分与をオーダーメイドでできる特約付金銭信託、あるいは公益信託である。くわえて、目的信託とか新しい類型の信託ができることによって、さらに活用範囲が広がるのではないかと思う。
問:
新しい類型の信託についてであるが、もっと具体的にいうとどういう商品やサービスが出てくるのか。
答:
新しい類型の信託として、自己信託、事業信託、目的信託などがいわれているが、先ほど説明した受益者を特定しない目的信託について、これは協会ベースの話ではなく、アイデアベースであるが、例えば、災害復旧の拠点を作るとか、地域の子育て支援とか、防犯対策などで目的信託を利用することが可能になると思う。そのほか、出身大学に研究施設をもってもらおうということで目的信託の利用も可能だと思うし、今後、広がっていくのではないかと思う。ただ、目的信託も、税制や規律の整備など、まだまだ検討しなければいけないところがある。もともと信託は福祉に適した制度であるので、積極的に対応していきたい。
問:
それは、みずほ信託銀行としてということか。
答:
今般の信託法改正によって、信託各社とも新しい商品、サービスの研究開発を進めると思う。我々、信託に携わる者が切磋琢磨していけば、お客様のニーズや社会的なニーズに合致した新しい商品やサービスを提供できるのではないかと思う。
問:
先ほど説明のあった事業信託ができることによって、業界の再編とか、M&Aなどで手伝うことは可能か。
答:
積極的な財産以外に債務もあわせて信託するものが事業信託といわれている。それによって、事業分野の切り分けがやりやすくなり、会社統合までは至らないが、ある事業分野だけの統合とか、提携ができるのではないかということで申し上げたところである。
問:
事業信託に対する企業からの関心度合いはどうか。
答:
まだこれからといった感じである。いろいろとお客様のニーズを探りながら、我々も検討していく段階である。
問:
今の段階で特にどういう業種からの関心が高いとか特徴はあるか。
答:
昨年12月に法改正され、政省令もまだ出ていない状況である。それらが出てきたところで、各企業からいろいろなニーズが出てくるのではないかと思う。

日本経済の見通し

問:
先ほどの日本経済の見通しを踏まえて、資金運用の場としての債券マーケットや株式マーケットをどうみているか。
答:
先ほど申し上げた通り、景気の回復は持続するのではないかと考えており、現在の運用方針は継続すると見ている。

年金運用

問:
一連の年金改革で、目標リターンが下がったり、分散で資産を広げたり、企業年金側も工夫していると思うが、年金運用ということで、最近の傾向はどうか。
答:
お客様の運用ニーズが非常に多様化している。ポートフォリオの組替えなどでも、分散ニーズが高まっている。我々もそれにあったきめ細かな運用提案を行っている。

地価の動向

問:
先月、発表された地価公示についてであるが、16年振りに全国でプラスに転じたということであり、地価の動向についてどう考えているか。
答:
先月、発表された地価公示は16年振りに全国でプラスに転じたということであるが、中身を見ると東京を中心に三大都市圏の商業地が全体を引っ張ったという気がする。地方は下落幅が縮小したということであるが、まだまだ、マイナスになっており二極化の動きが出てきていると思う。これからの不動産の動向であるが、今の価格が上がっている要因は、2つあると思っている。一つは、景気回復を背景とした実需が伸びているのではないかと思う。設備投資意欲も旺盛であるし、社員の採用ニーズも高く、オフィス需要などの実需が伸びている。もう一つは不動産証券化市場が活発化している。不動産の金融商品化とも言われているが、これによって運用資金が流入している。それも、国内だけでなく、海外の資金も入ってきている。しばらくは、今の不動産の状況は続くのではないかという見通しを立てている。

協会運営

問:
協会の運営についてであるが、担い手が拡大したということで、いろいろな信託会社が加盟していると思う。例えば、弁護士出身の方とか。一方で専業信託の中で、メガバンクグループの一員として、商業銀行の相乗効果でビジネスチャンスを広げようという信託銀行もあれば、独自の戦略をたててやっている信託銀行もある。協会の中にいろいろなタイプの信託銀行があって、経営戦略も異なっている信託銀行がある。ケースによっては利害関係というか、そういう場面も想定される。協会長としてリーダーシップをどう発揮して、信託の利用可能性を拡大するということをやっていくのか。そのあたりの難しさとかあれば教えてほしい。
答:
信託協会の加盟会社は、従前は専業信託銀行中心だったが、その後、金融改革により、外資系信託銀行、地域金融機関、都市銀行、証券系信託銀行が参入、そして 2004年12月の信託業法改正による専門の信託会社の設立など、いろいろなタイプの信託に携わっている方々が加盟し、今、51社となっている。ただ、冒頭の説明のとおり「信託協会の目的である信託制度の発達を図り、公共の利益を増進すること」といった目的は同じであり、ご質問のメガバンクのビジネスモデル云々とは別に、信託制度を普及させていこうという趣旨に差異はないと思う。むしろ、いろいろな方々が更にたくさん集まって、信託制度を更に、発達、普及させていければいいと協会長としては思っている。

協会長就任

問:
14年振りに協会長就任ということであるが、どう感じているか。
答:
信託の世界に3年身を置き、信託制度はいろんな意味で活用範囲が広いと感じている。信託法改正で、更に拡大すると思うので、1年間、信託業界の広報部長になったつもりで、信託の重要性や存在感をアピールしていきたいと思っており、よろしくお願いしたい。

以上

ページのトップへ戻る