池田会長定例記者会見

平成20年03月21日

会長として1年を振り返って

信託協会会長の池田でございます。昨年4月の協会長就任からまもなく1年になります。当社としては14年ぶりの会長会社就任でしたが、皆さんのご支援もいただき、何とかここまで来ることができました。まずは厚く御礼申し上げます。

本日が協会長として最後の会見となりますので、少しお時間をいただき、この1年間を振り返り、感想などを話したいと思います。

1点目は、84年ぶりに抜本的に改正された信託法の施行を協会長として迎えたことです。

信託協会では長年にわたり、信託法の先生方と共に研究を重ね、法改正を要望してまいりましたが、ついに昨年9月に新しい信託法が施行されました。昨年は、まさに信託制度の新たな発展に向けたスタートの年となりました。このような大きな節目の時期に協会長を務めたことは、誠に光栄なことだと思っています。

「受託者義務の合理化」、「受益者の権利拡充」、「新たな類型の信託制度創設」など、法改正により信託の利便性・利用可能性は大きく拡がりました。2004年12月の信託業法改正で、受託可能財産の制限が撤廃され、知的財産権の信託や排出権の信託など新しい信託商品が出てきましたが、今般の改正で、さらに高度な専門性の発揮と創意工夫が可能となりました。

当社では早速、今般の改正によって可能となった担保権の信託「セキュリティ・トラスト」を開発しました。今後は、家族信託や目的信託などの商品開発も進めていきたいと考えています。新しい信託法制の下、協会加盟各社が競い合って、質の高い商品・サービスを提供していくことを通じて、我が国経済の発展や国民生活の向上に貢献していきたいと思います。

2点目は、信託が経済の重要なインフラを担っていることを改めて実感したことです。

信託財産残高は順調に増加しており、昨年3月末の744兆円が12月末にはついに800兆円を超えました。500兆円を超えたのが、信託業法が改正になる前の2004年4月ですから、この約4年間で300兆円、約6割も増加しています。特に公的年金や企業年金、そして投資信託、また不動産流動化などの信託が大きな伸びを示しています。

また、2004年の信託業法改正により新規参入が始まった信託会社が、今年度は4社加盟し、信託協会の加盟会社数は過去最高に並ぶ54社となりました。信託の担い手の裾野も着実に広がっています。

「貯蓄から投資へ」の流れが本格化している中で、信託制度に対する期待は飛躍的に高まっています。こうした数字の伸びは、信託が経済の重要なインフラとなっていることを示していると思います。

3点目は、信託は今以上にもっと活用できる、という確信を持ったということです。

改正信託法で手当てされた遺言代用信託や、後継ぎ遺贈型受益者連続信託は、家族の生活保障、個人事業の承継などを実現するための有力な手段となります。また、昨年10月以降、金融審議会で議論された高齢者や障がい者の生活を支援する「福祉型の信託」についても、その必要性や重要性を踏まえ、実務的な観点から検討することが必要だと思っています。

一年前の協会長就任会見で、私は、元信託法学会理事長の故四宮和夫教授が言われた「信託はどのような目的のためにも設定されることが可能である。それを制限するものがあるとすれば、それは法律家や実務家の想像力の欠如にほかならない。」という言葉をご紹介しました。無限の利用可能性を持つ信託制度の普及・発展は、まだまだこれからが本番です。私ども信託協会としては、信託制度の健全な発展のために、引続き努力していきたいと思います。

私はこの1年間、いろいろな場で「信託協会の広報部長になったつもりで、信託の普及につとめる。」と申し上げてきましたが、信託協会ホームページの全面改訂や、大学・消費生活講座などへの講師派遣、あるいは学校の教員の研修受入れなど「信託の普及」に若干なりとも貢献できたのではないかと思っています。

最後になりますが、協会長の役目を果たすことができたのも、協会関係者、そしてマスコミの皆さまのご協力があったからこそと、深く感謝しております。協会長会社は4月に中央三井トラスト・ホールディングスに引き継ぐことになりますが、今後とも信託協会の活動に対して、ご理解、ご支援いただきますよう、よろしくお願い致します。

信託法改正と今後の課題

問:
昨年の法改正によって、業界がどのように変わってきたか。また、来年度に向けた課題は何か。
答:
先ほどの話にも重複しますけれども、信託関連法の大改正は、2004年12月の信託業法改正、それから2006年12月の信託法改正、この二つでほぼ大改正が完了したと言えると思います。信託業法改正で新たな信託の担い手が拡大された訳ですが、それによって、信託会社は新たに13社設立されています。従来は、金融機関しか信託業務は認められていませんでしたが、一般の事業会社でも信託業務ができるということで13社新たに設立されまして、うち10社が信託協会に加盟され、先ほどの説明どおり、加盟会社数は過去最高に並ぶ54社になっています。また、お客様の接点となる信託代理店も拡充しておりまして、2004年3月末は180社、3,600店舗でしたけれども、直近の2007年9月末では、315社、6,000店舗と飛躍的に増加しています。また、信託業法の改正で、受託可能財産の制限が撤廃されました。従来は6種類の財産権に制限されていましたが、財産権一般が対象となりました。それにより、新しい信託商品の取り扱いも始まりまして、昨年9月末現在で著作権の信託が18件、特許権の信託が7件、商標権の信託が1件受託されています。ほかにもご承知のとおり、排出権の信託やあるいは担保権の信託も誕生しています。そういうことによりまして、受託財産残高も伸びている訳で、一連の大改正は信託をおおいに飛躍させているということが言えると思います。 もう1点の今後の課題ですけれども、昨年10月のこの会見でも後半の課題ということで、3点申し上げました。1点目は、信託法改正の具体的成果を出すということです。特に新商品の開発、これは加盟各社がそれぞれやることですが、業界全体でお客様のニーズにあった新しい信託商品・サービスを引続き積極的にやっていきたいということです。2点目は、税制改正要望の実現ということであります。今年度については、概ね我々の要望を汲み取っていただいていますが、今年度対象になっていない、例えば後継ぎ遺贈型の受益者連続信託の課税の見直しなど、新商品の開発と大きく関わりますので、これからも利用者の利便性の確保という点から、引続き要望すべき点は要望してまいりたいと思います。3点目は次なる信託業法の改正、公益信託制度の見直しということについてです。昨年来、金融審議会で議論されていますが、具体的な検討はこれからということではありますけれども、信託制度の健全な発展という観点からしかるべき主張はきちっと行ってまいりたいと考えています。特に、今後の信託業界として注力していきたいということでは、これからの高齢化する日本の社会を支えるためには、先ほどの説明のとおり、高齢者や障がい者の皆さんを受益者とした福祉型の信託を具体的に検討していきたいと思います。ただ、これも信託業界だけで解決できる話ではありません。税制面の手当てや、あるいは官と民の役割分担など今後検討していきたいと考えています。

日銀総裁人事

問:
日銀総裁が空席となっているが、どのように受け止めているか。
答:
ご承知のとおり、国際金融市場が大混乱しているということ、それから、日本経済を見ても一昨日の月例経済報告でもあったように踊り場に差し掛かっているということを捉えれば、そういう状況の中で日銀総裁が空席というのは非常に由々しき問題であると思います。それによって、国際的な信認が低下するとか、マーケットへの悪影響が出てくるということになると、これは大変なことになると思います。もう少し与野党ともに危機感を持って対応してほしい、空白期間をできるだけ短くするべく早期に対応してもらいたいと考えています。

景気

問:
アメリカの景気後退が指摘されていて、日本経済にもかなり影響が出ていると思うが、そういう中で、貯蓄から投資への流れについてなど、どのくらい影響があると見ているのか。
答:
米国がリセッションにいたっているのではないかという議論がありますが、それによってわが国経済、あるいは企業収益に悪影響が出てくるのではないかという懸念はあります。足もとの企業業績はこの3月決算を見通す限りそんなに大きな影響は出てこないと思いますが、円高、原油高、原材料高など、これから先どういった影響が出てくるかということについては、注視していきたいと思っています。投資信託という点で捉えると、これは明らかに販売は落ちています。当社だけで見ますと、昨年の9月と比べると40%ぐらいは落ちているのではないかと思います。このへんは、投資家の方々も景気動向や為替動向などを見ながら投資を考えていますので、その影響が出ていると思います。

不動産市況

問:
個社としてでも結構であるが、来週月曜日に地価公示が発表される。最近の不動産市況について、どう見ているか。
答:
例えばJリートの価格が、ピークだった昨年の5月末と比べると、今の足もとは43%程度落ちていますが、これは不動産が金融商品化していますので、株価に連動した動きだと思います。また、一部外資系が利益確定で売りに転じているとか、資金面で少しタイトになってリスク許容度が低下しているという事実はあります。ただ、不動産の実態がそこまで下落しているかというと、そういうことではなくて、例えばこれは民間の発表ですが、東京23区の大規模なオフィスの供給は、一昨年154万u、昨年が119万u、それが今年はその半分の約65万u、来年は87万uということで、需給はタイトな状況にあるといえます。それと、今日の新聞で報道されているとおり、各会社の新規採用者数もまだ上がっていますので、オフィス事情はそんなに悪くない。このように需要と供給の環境を見れば、まだそんなに落ちないと思います。
問:
リートが投資しているような投資用物件については、様々な要因があると思うが、全体に昨年、一昨年と続いた都心部を中心とした地価の急騰が鈍化して、さらにそれが鈍化してきていると見方がある。それについてはどうか。
答:
バブル期の不動産価格の動きとは、明らかに違うと思います。確かに、現場の情報を集めると、地方のところは動きが鈍くなっている、また東京の近郊も鈍くなっている、あるいはオフィスや物流施設はいいけれども住宅の方はやや動きが変わってきているということはあります。しかし、不動産全体が落ち込んでいるかというとそういうことは言えなくて、まだまだ外資のファンドも日本に投資したいとか、年金基金でも他の運用資産との関係で中長期的に見て不動産関連の商品、例えばリートに投資したいとかという動きが一方ではありますので、中長期的には堅調な見通しを持っています。

サブプライム問題

問:
サブプライム問題で、サブプライム関連の証券化商品が下落している影響で、最近ではサブプライム以外のRMBSとか、ABSとかの価格が下落していて、LBOローンの流通市場の価格も下落している。信託銀行も運用の一環として、こういったものを保有していたりするが、その価格が3月末の決算に与える影響はどうか。
答:
信託協会としては加盟各社がどういう状況かというのは捉えてませんので、業界全体としてどうなっているかというのはわかりません。ただ、我々みずほ信託個社で言いますと、この前の中間決算発表で、外貨建ての証券化商品は34億円ありますけれども、しかるべく引当金を積んでいるということで発表させていただいています。わが社でいいますと、さほど影響はないと言えます。

信託の受託残高

問:
信託の受託残高が800兆円を超えたということだが、その伸びてきている分野というのはどのあたりか。
答:
まず投資信託などいわゆる管理型の信託が伸びています。それと金銭債権や不動産の流動化に伴って流動化型の信託も伸びています。信託を大きく管理型信託、運用型信託、流動化型信託と3類型に分けていうと、それぞれ伸びていますが、特にということであれば、そういうところが顕著だと思います。具体的には協会で9月、3月の計数について発表しています。

新しい信託法に関連した信託商品

問:
業界共通の信託商品ということで、リテールということでは、かつて、ビッグなどの商品があったが、新しい信託法に関連した信託商品として、どういうものが必要と考えているか。
答:
業界共通の商品を出そうということではありません。商品開発は、まさに個社ごとに進めていくものですが、業法改正、あるいは、信託法が新しくなったということで、従来と違って、自由度が増してきたので、これは我々としてもお客様のニーズを捉えながら、新商品やサービスを積極的にやっていきたいということです。まだ先ほどの説明の数字程度しかできていないということでは、皆さまのご期待に十分には応えきれていないと思いますが、これからだと思います。信託の利便性が増したということで、いろいろな場面で信託が使われてきて、それが新しい信託商品につながってくるのではないかと思います。これは、まさに我々の知恵の出しどころだと思います。

排出権の信託

問:
排出権の小口販売というのは、今年くらいから始まってきたが、これは業界として、どういうふうに広がっていくかという見通しを持っているか。
答:
排出権については、業界というか、世界全体の問題ではないかと思います。大口のものを信託を使って小口化し、信託商品化して、中小企業あるいは個人の方にも持っていただくということになると、排出権問題は対応の幅が広がってくるのではないかと思います。ただ、現時点で規模がどうなるかと言われるとそれはわかりません。

株券の電子化

問:
株券の電子化が来年1月に行われるが、証券代行の手数料がどうなるか検討していると思う。そのあたりの見通しはどうか。
答:
個社ごとの話になりますが、わが社では、先々手数料体系をどう持っていけばいいか現在検討中です。
問:
いつぐらいまでに決めるのか。
答:
いずれにしても来年1月には株券が電子化されるので、それまでの間にはお客さまにお示しして、説明しなければいけないと思っています。

信託業法の改正

問:
業法の再改正の検討ということであるが、その場合に担い手の拡大の追加と会長がおっしゃったが、そこでNPOとかも入ってくると思う。そのあたりについてどう考えているか。
答:
信託の担い手が増えるということはウエルカムであると思います。いろいろな立場の人たちが信託制度を使うことによって、信託制度が普及・発展していくことについては、賛成であります。ただ、受益者のことを考えると、受託者、信託業務を担う人たちの、例えば財務内容とか管理体制とか、そういうことはきちっとしていかないと受益者に迷惑がかかる。例えば、高齢者、障がい者の方を受益者とするような信託ということになると、その辺の手当てをきちっとしないといけない。ただ単に担い手が多くなればいいということにはならないと思います。そこは慎重にやらないといけないと思います。

以上

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