常陰会長定例記者会見

平成22年10月21日

冒頭、上野専務理事より、「第5回信託オープンセミナー」の大阪開催の案内があった。

半年を振り返り

信託協会長就任時に、所信として4項目を掲げましたが、在任の半年を振り返りまして、これまでの対応状況と今後の取組方針について申し上げたいと存じます。

まず、所信の1点目として、「社会の期待に応える信託スキームの開発」を掲げておりました。これについては、平成23年度税制改正要望において、「日本版プランド・ギビング信託」や、「教育資金贈与信託」といった新しい信託商品の実現に向けた提言を行っております。
 この「日本版プランド・ギビング信託」は、信託の寄付仲介機能を強化する観点から、非営利団体に対する寄付を目的とする信託に対して譲渡所得非課税などの税制措置を求めるものであります。これは米国で導入されている制度であり、個人寄付の増加に大きく寄与していると考えられております。この要望については、「新しい公共」形成に関する施策の1つとして、文部科学省、金融庁の省庁要望に採り上げられておりますので、今後、政府税制調査会においてもご議論頂けるとありがたいと考えております。
 「教育資金贈与信託」は、少子・高齢化の進展への対応として、子や孫のための教育資金の贈与についての贈与税の課税繰り延べ措置を求めるものであります。この要望は、省庁の要望には採り上げられておりませんが、引き続き関係方面へお願いしていきたいと考えております。
 なお、来年3月に租税特別措置法の期限切れを迎える「企業年金の特別法人税」について、撤廃をお願いしているところであります。これについては、公的年金の補完・国民の老後生活の維持・安定を図る、という企業年金に対する社会的要請に鑑み、撤廃の措置を講じていただきたいと考えております。
 また、税制改正要望以外にも、国土交通省の主催する「『新たな下請代金債権保全策』検討委員会」に、信託協会も参加して、「信託によって下請代金の保全ができないか」といった観点での議論が行われております。
 信託協会としても、下請代金の保全のための社会インフラとして信託がお役に立てるのではないかと考えており、制度具体化に向けて、引き続き積極的に参加していきたいと考えております。

2点目として、新しい信託法の施行から2年半を経過し、その更なる活用を検討する旨、掲げておりました。これについては、信託協会内に「信託の活用拡大に関するワーキンググループ」を設置し、@「新類型の信託スキームの更なる活用」と、A「社会・経済構造や環境の変化に応じた信託の活用」の二本柱で検討を進めております。

3点目は、様々な分野でアジアとの連携強化が強く求められている中、信託に関しても、お互いの制度への理解を深めていくことが重要であると考え、中国をはじめアジア各国の信託協会等との交流や情報交換の実施を検討することとしておりました。これについては、つい先週のことですが、信託協会の専務理事、業務委員長ほか約10名が中国信託業協会等を往訪し、お互いの協会活動の紹介や、業界動向等についての情報交換を行ってまいりました。これをきっかけに、将来的には更に交流を深め、法制や税制に係る情報交換等を通じ、両国の信託制度の研究の振興を支援することなどを検討してまいり、我が国の信託の優れた面を「制度輸出」できれば、我が国の金融業においても有益ではないか、と思います。

最後に、4点目は、利用者保護の推進のため、新たに整備された金融ADR制度に適切に対応する旨、掲げておりました。既に公表しているところですが、9月15日に信託業法および金融機関の信託業務の兼営等に関する法律に基づく指定紛争解決機関の指定を受け、10月1日より同機関としての業務をスタートしております。今後も、利用者保護の更なる推進という観点から、指定紛争解決機関として、全ての信託兼営金融機関、信託会社等の信託業務等に係る苦情の解決や争いがある場合のあっせんなど、信託業の健全な発展に資する業務を行ってまいります。

以上、上半期の振り返りを述べさせて頂きました。今下半期につきましても、就任時に掲げました所信に沿って、引き続き着実に活動してまいりたいと存じます。

税制改正要望について

問:
 税制改正要望で取り上げた「日本版プランド・ギビング信託」や「教育資金贈与信託」について、譲渡所得の非課税化、贈与税の課税の繰延べ措置を求められているということですが、これにより、社会的にどのような影響が出てくるのか教えてください。
答:
 日本版プランド・ギビング信託や教育資金贈与信託については、いずれも新しい信託の活用ということで考えています。
 日本版プランド・ギビング信託についてですが、政府の「新しい公共円卓会議」においても、寄付を促す環境整備の重要性が確認されています。信託協会としても、寄付を増やすという観点で信託がお役に立てないかと考えたものです。実際に、アンケート調査を行ったところ、寄付に関心がある人は多いものの、「使途内容が不安」、「どこに寄付すればいいかわからない」といった理由で寄付が行われていない、という実態が見えてきました。そこで、こうしたニーズへの対応として、寄付者と非営利団体の間を繋ぐ「寄付仲介機能」が重要と考えて要望を行っています。顧客基盤と社会的信用のある信託銀行等が、NPO法人等との「寄付仲介機能」を担うことで、効果的に寄付者の募集をし、寄付拡大という社会的ニーズにお応えできるのではないかと考えています。
 次に、教育資金贈与信託についてですが、先に行ったアンケート調査で、祖父母世代は孫のために費用を使いたい、教育資金を援助したいというニーズが高いという結果が出ています。こうしたニーズに応えるべく、信託の機能を活用し、払い出しを教育資金に限定した信託スキームを使って、子・孫等へ贈与を行った場合について、税制等で優遇措置を設けることにより、次世代の教育資金を確保、少子化対策、子育て世代の教育費負担軽減による消費拡大・内需振興につながればと思っています。

景況感について

問:
 今日も円高が進んでおり、景気回復の時期が後ずれすると言われています。信託業界から見た現在の景況感や見通しについて教えてください。
答:
 個社としての見方をお答えします。中国をはじめとする新興国に景気引き締めによる減速感が出ていることと円高の影響で、足もとの輸出の伸びが鈍化しています。国内の製造業部門では、エコカー補助金の期限切れによる自動車の減産やIT関連部門の過剰在庫による生産調整圧力の高まりなどのために、生産が伸び悩んでいる状況です。このような動きを踏まえて、国内景気は「踊り場」的な局面に入る可能性が高いと認識しています。これは政府が今月の月例経済報告で、景気の現状について「足踏み状態」と表現したのと、基本的には共有した認識を持っています。その一方で、新興国の需要の方は、底堅い部分がありますし、輸出が国内景気の支えとなり、いわゆる「二番底」に陥る事態は回避できるのではないかと考えています。この点も、政府が月例経済報告で示した見方と共通しています。逆に言えば、海外景気の動向が国内景気にとって最大の下振れリスクであり、ご質問いただきました円高も重要な下振れリスクの一つであると認識しています。実態経済として、わが国の企業のコスト競争力については、構造改革によって、一定の悪影響を抑制できる力を持っているとは言え、輸出依存度の高い企業、あるいは国内生産拠点の多いところにつきましては、大きな打撃を受けておりますし、加えて、円高が家計や企業のマインド悪化を起こしている部分があり、景気の足腰に大きなダメージを加えていくということを懸念しています。

消費者金融との取引について

問:
 武富士の会社更生法申請を踏まえ、消費者金融業界の今後について、どのような見解を持っているか教えてください。
答:
 改正貸金業法の全面施行により、延滞が増えたり、過払い請求が急増するのではないかという懸念がありました。それについては、比較的落ち着いた状況であったと聞いていましたが、この9月末に武富士が会社更生法を申請し、それ以降、消費者金融各社へのお問合せ等も多くなっているのは事実だと思います。業界に与える影響については、今のところ計りかねており、注意深く見守っているところです。

日銀の追加緩和措置について

問:
 日銀が今回の追加緩和で、はじめてREITやETFといったリスク債権を買い取るという政策を打ち出されました。特にREITなどへの影響をどう考えるか教えてください。
答:
 日銀がREITやETFの購入という、従前と異なる異例とも言える領域まで踏み込まれたということを高く評価しています。日銀がREITを購入すること自体は、投資用不動産の最終エンドユーザーの一つでありますREITの資金調達能力を増すということにつながります。REITが資金調達能力を向上させるというのは、ポートフォリオの入れ替えにつながっていきますし、現実問題として、それ以前からも資金調達環境の改善によるポートフォリオの入れ替えが、取引量の一定の増加につながっています。今回の包括緩和によって、調達環境の改善からポートフォリオの見直し、それから新たな資金の流入も期待できますので、私ども信託業界のビジネスを含めて、不動産業界にも好影響を与えていくと期待しています。

住友信託銀行と中央三井トラスト・ホールディングスの統合による業界への影響について

問:
 住友信託銀行と中央三井トラスト・ホールディングスの統合により、他社との指標が逆転する等、いろいろな影響があるかと思います。この統合が業界にどのような影響を与えるのか教えてください。
答:
 両社の統合により、信託商品の開発等に向ける経営資源が確保できますので、業界内では、切磋琢磨に足りる環境ができるということで、より業界の活性化につながるのではないかと思います。

中国との交流について

問:
 さきほどアジアとの連携強化という中国のお話がありましたが、一方で、昨今、チャイナリスクが改めて認識されている状況です。このような状況下でアジアとの連携強化の方針に変わりはないのか教えてください。
答:
 日中両国の間で生じている様々な問題については報道で承知しているが、信託について言えば、中国においては、2001年に新たな信託法ができまして、今、創成期にあり、わが国の法制度を含めて信託制度を研究したり、いい面を導入したりというところがあります。その意味では、マクロ的な議論は承知していますが、少し次元の違う観点として、交流を進めることができると思っております。

以上

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