北村会長定例記者会見

平成24年10月19日

半年を振り返り

信託協会会長就任時に、所信として「信託機能の一層の活用による経済・社会への貢献」、「信託の健全かつ着実な発展」を掲げ、活動してきました。

ここまでの半年を振り返り、これまでの活動状況と今後の取り組みについて報告します。
 まず、税制改正要望ですが、今年度は、主要要望として「教育資金贈与信託の創設」と、「特別障害者扶養信託(特定贈与信託)の税制上の拡充措置」を掲げ、活動してきました。
 1つめの「教育資金贈与信託の創設」は、信託機能を活用して祖父母から孫へ将来の教育資金を贈与した際に、贈与税の課税繰り延べ等の特例措置を求めているものですが、こちらは現在、文部科学省、金融庁、経済産業省の共同要望として取り上げられています。7月に政府で閣議決定された「日本再生戦略」においても、「教育資金を通じた世代間の資産移転促進のあり方について検討」と記載されているところであり、今後、政府税制調査会でも前向きにご議論いただけるとありがたいと考えています。
 2つめの「特別障害者扶養信託(特定贈与信託)の税制上の拡充措置」ですが、まず、「特別障害者扶養信託」とは、特別障害者の経済的な安定を図る目的で個人が特別障害者を受益者として金銭等の財産を信託した場合に6000万円を限度に贈与税が非課税となる制度で、ご両親が抱える「親亡き後の不安」の解消のみならず、障害者の自立支援の一助にもなっています。
 信託協会では、本制度の対象者が特別障害者に限定されていることから、一般障害者への対象拡大を要望しているほか、障害者団体等への寄附ニーズに対応した所要の措置を要望しており、こちらも現在、厚生労働省、金融庁の共同要望として取り上げられています。
 以上のとおり、今年度は2つの主要要望ともに関係省庁にて取り上げていただいておりますので、要望の実現に向けて引き続き活動してまいりたいと存じます。

次に、規制改革に関する要望ですが、信託協会では9月に今年度の規制改革要望を決定し、「国民の声」に提出しました。今年度は、「信託機能の活用の一層の促進」を目指す要望を14項目、「利便性が高く、安定した企業年金制度の構築」を目指す要望を5項目としており、「信託機能の一層の活用による経済・社会への貢献」という観点から、要望の実現に向けて取り組んでまいりたいと考えています。

続きまして、年金資産消失問題への対応ですが、本年2月に年金資産消失問題が発覚して以降、信託協会では、企業年金に携わる者として、今後このような問題が生じることを未然に防止するためにどのような貢献ができるか検討を重ね、9月に「年金資産消失問題を契機とした信託協会の自主的な取り組み」を決定し、公表しました。信託協会では引き続き、企業年金の資産運用・管理にこれまで以上に貢献できるよう、積極的に取り組んでまいりたいと考えています。

以上、ここまでの活動の振り返りを述べさせていただきましたが、最後に、16日に、ソシエテジェネラル信託銀行に対して、金融庁より業務停止命令を内容とする行政処分が行われました。
 信託協会はこれまで、信託業の健全な発展に向け、加盟会社に対する啓蒙活動を行ってまいりましたが、加盟会社がかかる事態となったことは大変遺憾であります。
 本件につきましては、昨日、自粛勧告等委員会を開催し、行政処分を受けた同社への対応を審議した結果、信託協会として同社を「厳重注意」とする措置を決定いたしました。

こちらからの報告は以上です。残された半年につきましても「信託機能の一層の活用による経済・社会への貢献」、「信託の健全かつ着実な発展」のために活動してまいりたいと存じますので、引き続き、ご理解、ご支援をいただきますようお願い申し上げます。

以下、質疑応答

税制改正要望について

問:
 平成25年度税制改正要望について、教育資金贈与信託の創設、特別障害者扶養信託の所要の見直しが実現すると具体的にどのような効果や意義があるのか伺いたい。
答:
 教育資金贈与信託は、祖父母から孫へ教育資金を贈与するための信託で、その際に贈与税がかかるところを非課税としてほしいという要望です。この信託の創設が認められれば、個人金融資産1,500兆円の約6割を保有すると言われる高齢者世代から若年世代に資産移転を促すことができます。そして、これに伴う子育て世代の教育費負担の軽減を通じて、消費性向が高い親世代の消費拡大による経済活性化という効果が期待できます。
 また、将来を担う子どもたちの教育の充実、グローバルな人材の育成にも繋がると考えられ、加えて、祖父母から一括して贈与された資産が孫の教育費として使われることにより、子どもの将来の教育費への不安が解消され、少子化対策に資するという効果も期待できるものと考えています。
 次に、特別障害者扶養信託の見直しについてですが、この要望は、現在この商品を利用できる障害者の方が重度の障害者に限定されているところを、一般障害者の方にも拡充してほしいという要望です。そもそも、この制度は、障害者の方に、贈与税の負担なく資産を生前贈与し、また、贈与された資産を安全・確実に管理することができる制度であり、特に、ご両親亡き後の障害者の生活の問題、いわゆる「親亡き後問題」の解消の一助になるものです。この「親亡き後問題」は、一般障害者の方も特別障害者の方と同じく抱えている悩みであり、今回の改正を行うことで、より多くの障害者の方の生活安定及びご両親が抱えるご不安の解消に繋がるものと考えています。
 また、信託協会では、信託終了時の残余財産を障害者団体や社会福祉施設等へ寄附できる制度とすることも併せて要望していますが、この点に関するご両親のニーズも非常に強いものがあります。この要望が実現し、残余財産の寄附が可能となれば、障害者から障害者へという新たなお金の流れができ、より多くの障害者の方のご支援に繋がるのではないかと考えております。

AIJについて

問:
 AIJ問題に関して、信託協会の再発防止策について伺いたい。先頃、金融庁において、規制・監督の見直し案が示されたが、信託銀行がファンドから直接、基準価格や監査報告書を入手するということが盛り込まれている。協会の取り組みとあわせて、再発防止が十分かどうか伺いたい。
答:
 信託協会としての取り組みについては、9月に公表しております。ポイントを申し上げると3つあります。
 1点目は、年金特金を受託する際に、年金基金等が投資一任業者などの運用受託機関から必要な説明を受けているかということを、特金の受託者が確認することです。これは、例えば、時価の算出根拠であるとか、ファンド監査をやっているかというような厚生労働省のガイドラインで確認が求められているようなことをきちんと年金基金等が確認しているかということを年金特金の受託者として確認することであります。
 2点目は、年金基金等の分散投資義務の適切な履行を促す取り組みです。具体的には、一定の運用プロダクトについて、年金基金等の総資産に占める割合が適切な割合を超えると考えられる場合には、年金基金等に対して許容できるリスクの範囲内であるかどうか確認していただくよう要請します。
 3点目は、年金信託を受託する際の、適合性確認の具体化や高度化であります。具体的には、年金基金等から運用ガイドラインの提示を受けた際に、年金基金等が定めている運用の基本方針と齟齬が生じていないか、あるいは、正式な意思決定手続きを経ているか確認することなど、適合性確認の具体化及び高度化を実施します。
 これは、信託協会の取り組みだけで構成されているわけではなく、金融庁や厚生労働省による法令等の改正にあわせて、組み合わせて取り組んでいくことで、AIJ問題と同様の事態については、相当程度防止できるのではないかと考えています。
 今回、金融庁の内閣府令改正案の中で、外国籍私募投信などのファンドを組み入れる際には、基準価額や監査報告書を信託銀行に届けるような措置を投資一任業者に義務付けるとされています。信託銀行はそれらを突き合わせる訳ですが、AIJ問題ではファンドの基準価額を算出する受託銀行、監査法人も不正をしていなかったということですので、基準価額を直接入手でき、更に監査報告書も受け取ることができるというのは、実効性のある再発防止策であると考えています。

ソシエテジェネラル信託銀行について

問:
 ソシエテジェネラル信託銀行の問題が発生した。(AIJ問題を受けて)不正の監視役ということで、信託銀行への期待が高まっている段階で、再度、このような事案が発生している。この件についての受け止めと協会としての責任についてどう考えるかについて伺いたい。
答:
 加盟会社であるソシエテジェネラル信託銀行が行政処分を受けたことについては、大変遺憾に思っております。AIJ問題の後、信託協会として再発防止に取り組んでいた中で、大変残念だと思っています。先程ご説明したとおり、昨日、同社に対し「厳重注意」とする措置を決定しております。
 信託協会といたしましては、引き続き、法令等遵守に関するセミナーや研修等を通じて加盟会社の意識の向上に努めるなど、コンプライアンス強化に資する取組みを行って参ります。

厚生年金基金制度の廃止について

問:
 AIJ問題を受けて、政府から厚生年金基金制度の廃止の方向性が示されている。これについて、賛否両論出ているが、どう受け止めているか。
答:
 厚生年金基金制度は、加入者・受給者あわせて700万人以上の老後生活を支える社会保障制度の一つであり、今後、公的年金の縮小が避けられないと言われている中にあって、その存在意義は引き続き重いものだと考えています。
 健全に運営している基金あるいは健全化に向けて努力を続けている基金、「従業員の年金を守る」ために懸命に努力している事業所も数多くあるというのが実感であり、有識者会議においては制度存廃の両論が併記されておりました。
 その後、9月28日に厚生労働省から「代行制度については、他の企業年金制度への移行を促進しつつ、一定の経過期間をおいて廃止する方針」が公表されていますが、信託協会としては、10月中に設置される厚生労働省の「専門委員会」での議論を見守っていきたいと考えています。
 信託協会としての所見は、以上のとおりですが、少々補足させていただきます。
 厚生労働省の資料によると、平成24年7月時点で厚生年金基金は576あり、およそ半数は代行部分を確保しています。つまり、健全に運営している基金が数百あり、そこには数万の事業所が加入しています。
 この点を踏まえ、加入者・受給者の目線で考えますと、厚生年金基金の三階建て部分、つまり、一階が国民共通の基礎年金、二階をサラリーマンの報酬比例部分、三階というのが企業ごとの加算年金ということになるのですが、その三階の企業ごとの加算年金を維持できる道を議論していただくことも必要なのではないかと考えています。
 それから、厚生年金基金制度の在り方といった中長期的施策だけでなく、解散決議済み基金が財政状況から解散できない問題など、早急に解決すべき喫緊の課題についても、基金の実情を踏まえた議論が行われることを期待しています。
 もう1点、厚生年金基金制度の在り方については「専門委員会」での議論を見守ってまいりますが、私ども運用機関としては、GPIF連動運用などの提案などを通じて、引き続き基金のお役に立ちたいと考えています。現在、一部に代行部分は5.5%で運用しなければならないので、不足分がますます増えていくのではないかという誤解が生じているのではないかと思います。代行部分は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と同じ利回りであればよいということになっていますので、信託銀行としては、GPIFの運用利回りに合わせることにより、代行部分の積立不足が拡大しないような運用手法を提案しており、今後もこうした提案を通じて基金のお役に立ちたいと考えております。

ソシエテジェネラル信託銀行について

問:
 厳重注意処分というのは、注意するだけか。具体的に処分がいくつ種類があって、何番目に重いものか。この処分が適切か。
答:
 (上野専務理事より回答)本日、同社に対して、厳重注意を行ったところです。処分には、厳重注意のほかに協会活動の自粛、除名といった3つがあり、内規に基づいて、行政処分に至った事案を勘案し、自粛勧告等委員会において審議のうえ決定するということになっています。そういう中で、今回は厳重注意が適当であろうということになりました。
問:
 最低限のチェックを怠っていたということだが、この事例というのは、ソシエテジェネラル信託銀行のみにしか起こりえない特殊な事例だったのか、他の信託銀行でも起こりえる事例だったのか伺いたい。
答:
 協会として、各社を検査しているわけではありませんので、私見ということでお話をいたします。今回の事例は、年金信託の受託者が運用を受託している中で、当然行うべきデューデリジェンスとモニタリングを行っていなかったので処分されたケースであって、一般的にはきちんとしたデューデリジェンスとモニタリングが行われていると考えています。

AIJについて

問:
 AIJ問題の再発防止策について、協会としての自主的な取り組みに加え、運用機関から送られる基準価格の突合作業が新たに取り組まれることになると思うが、実際、それにより基金側が負担するコストは高まるものなのか。基金も運用の成績を高めなければならないという厳しい状況で、負担がどうなるのか見通しを伺いたい。
答:
 先程お話したような基準価格の突合作業等について、実務的な検討を始めたところです。例えば、今ある数千件のファンドを機械的に全件突合するとなると、かなり時間やコストが必要になるかもしれません。それは、引き続き関係者と相談しながら具体的に実務を詰めていくことになります。コストの負担というのは、報酬をどうするかという問題で、個社の判断によりますが、それも実務的な検討を行っていかなければ、現状では何とも言えないのではないかと思います。
問:
 検討のスケジュール感はどうか。
答:
 金融庁の府令案等のパブリックコメントが開始され、我々も実務的な検討を始めていますので、府令が確定し、施行されるまでには何らかの手当てをしておかなければならないのだろうと思っています。

ソシエテジェネラル信託銀行について

問:
 ソシエテジェネラル信託銀行の処分は何番目に当たるか。
答:
 (上野専務理事より回答)3つあるうちで軽いものです。
問:
 過去、除名を受けたところはあるか。
答:
 (上野専務理事より回答)
 除名はまだありません。最近では、ジャパン・デジタル・コンテンツ信託、ライツ信託が業務の一部停止命令を受けた際、協会活動の自粛を求めました。
 その後、ジャパン・デジタル・コンテンツ信託については、免許が取り消され、また、ライツ信託については、信託業を廃業しましたので、それぞれ協会を退会しました。

景気認識

問:
 日本の景気の腰折れ懸念といわれているが、どのように認識されているか伺いたい。
答:
 企業の資金需要について、一貫して弱いというのはほとんど変わっていないと思います。各企業の方に景気の感触をお聞きすると、8月くらいまでは、復興需要であるとか、エコカー補助金であるとか、比較的国内の需要は強いという感触を持っておられた方が多いと思います。政策効果中心のものはどこかで減速するもので、9月くらいからかなり減速しています。海外の需要が、中国・アメリカを中心に、年末くらいから回復してきて内需から外需にバトンタッチするかたちで、日本の景気は、緩やかながらも回復基調を続けるというのが多くの方の見方でしたが、ここにきて、これが交錯してきていると思います。1つは中国の回復について、かなり不透明感を強めていると思います。アメリカは、逆に、最近、住宅関係がかなり復調しており、バランスシート調整の終結が見えつつあるとの感触が強くなっています。欧州については、IMF総会で多くの方と話した感触もそうですが、ユーロ危機の克服については、自信を持っている印象を受けました。一方、足元の景気が強いかというとそれほどでもなく、不透明感は一時よりやや増していくという懸念もあり、強弱両方あるというのが実感ではないでしょうか。
 不動産について申し上げると、都心5区のオフィスビル賃料は、ゆるやかな低下から横ばい、空室率は、年間を通して横ばいということで、明らかな回復基調を確認するに至っていません。
 住宅の方は、首都圏のマンションの供給量あるいは成約率、これが年間を通じて増加傾向を維持しています。中古マンションの成約件数も増加傾向にあり、当面、住宅市況は安定的に推移していくことと思います。Jリートについては、順調に資金調達が進捗しています。1月から9月までの、Jリートの物件取得は、6,252億円と前年同期比で1千億円程度増えています。
 また、アジアの不動産価格はバブルの傾向にあり、キャップレートが下がっています。例えば、シンガポールだと4%、香港で3%台前半、台湾ですと2%台前半ですが、東京は5%台前半であり、海外投資家は、東京の都心物件について関心を高めていると思います。今後、底打感が強まれば、緩やかながら回復に向かってくると期待しています。

以上

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