北村会長定例記者会見

平成25年03月21日

1年を振り返り

信託協会長の北村でございます。昨年4月の協会長就任からまもなく1年になります。

本年度は「信託機能の一層の活用による経済・社会への貢献」、「信託の健全かつ着実な発展」を信託協会長就任時に所信として掲げ、これまで活動してきましたが、本日が最後の会見となりますので、この1年を振り返り、何点かお話したいと思います。

まず、税制改正要望ですが、本年度は「教育資金贈与信託の創設」、「特別障害者扶養信託の税制上の拡充措置」を主要要望に掲げ、積極的に活動を行ってまいりました。
 その結果、「教育資金贈与信託の創設」については、本年1月11日に公表された「日本経済再生のための緊急経済対策」で取り上げられた後、25年度税制改正大綱において「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」として手当てされ、現在、税制改正法案として国会にて審議いただいています。内容はすでに報道されているとおり、親や祖父母が信託銀行等の金融機関を通じて子や孫への教育資金を一括贈与した際に、1,500万円を上限として贈与税を非課税とするものです。
 信託協会が昨年実施したアンケート調査では、祖父母が孫に教育資金を一括して贈与したいというニーズが相応にあることが確認できており、教育資金の贈与税非課税措置が導入されることで、今後、高齢者世代から孫世代への資産移転が後押しされるとともに、子育て世代の教育費負担軽減を通じて、消費拡大ひいては経済の活性化に繋がることが期待されています。
 信託業界では、現在、お客様のニーズに応える信託商品を各社で検討しているところであり、法令等必要な準備が整い次第、できるだけ速やかに商品提供できるようにしたいと考えております。
 また、特別障害者扶養信託(特定贈与信託)については、従来、重度の障害者である特別障害者の方のみが対象であったため、一般障害者まで対象を拡大してほしい旨要望してまいりました。その結果、一般障害者については、障害等級2級・3級の精神障害者、中軽度の知的障害者の方が新たに対象に加えられるとともに、贈与税の非課税限度額は3,000万円ということになりました。
 信託協会では、これらの税制上の措置を踏まえた信託商品を、今後より多くの方に利用していただけるよう取り組んでまいりたいと存じます。

次に、アジアとの交流では、昨年7月に韓国の金融投資協会と、また、今月にはシンガポールの受託者協会と交流事業を実施しました。いずれもお互いの国の信託業の現状など多岐に亘る情報交換を行い、大変有意義な交流であったと考えております。こうした交流を通じてアジアにおける日本の信託業への関心が喚起され、今後一層の交流進展につながることを期待しております。

最後に、年金問題への取り組みでは、年金資産消失問題等を契機に信託協会で検討を重ね、昨年9月に未然防止に向けた自主的な取り組みを公表しました。その後、内閣府令等の改正など規制、監督強化に向けた所要の手当てが行われ、再発防止に向けた一連の対応は一区切りついたところですが、企業年金に永年携わってきた者として、今後もこれまで以上に資産運用・管理に貢献できるよう積極的に取り組んでまいりたいと存じます。

以上この1年を簡単に振り返りましたが、本年度は税制改正要望で2つの主要要望がいずれも実現したほか、「信託」という言葉が取り上げられる機会が以前よりも増えるなど、信託業界にとって非常に実りの多い1年でありました。また、年金問題への取り組みを通じ、負託された信頼・信任の重み、信託に対する期待の高さを改めて認識した1年でもありました。
 この間の皆様のご支援に深く感謝申し上げますとともに、心から御礼を申し上げます。

最後に、信託協会会長会社の務めは、来月4月に三菱UFJ信託銀行さんに引き継ぐことになります。今後とも信託協会の活動に対して、ご理解、ご支援いただきますよう、よろしくお願い致します。

以下、質疑応答

税制改正について

問:
 相続税の基礎控除の縮小、教育資金贈与の非課税等、信託業界の強みを生かせる内容が含まれているが、今後、業界としてどう取り組んでいくかを伺いたい。 
答:
 今回の税制改正では、相続税、贈与税の見直しという信託業界にとって大きな影響のある改正が盛り込まれています。特に、相続税では、基礎控除の縮小や税率の引上げが平成27年1月から行われ、相続税の課税対象者が確実に増えるものと考えられます。このため、お客様の関心が非常に高まっており、これまでも遺言信託等を通じて、相続に関するお客様のニーズに応えてきましたが、今後も資産の運用管理や次世代への承継といったご相談に応じていきたいと思います。また、新たな商品サービスの研究開発に取り組んでいきたいと思います。
 教育資金一括贈与については、信託協会および信託各社に多くのお問い合わせがあり、税制改正を踏まえた商品を具体的に検討中であります。業界としては、統一呼称を「教育資金贈与信託」とし、各社共通でこれを使うことになっており、それぞれの社で、商品提供の準備を進めているところであります。4月以降、出来るだけ早い時期に商品をご提供できればと考えています。

日銀の人事について

問:
 昨日、黒田総裁が正式に就任されて、黒田体制がスタートしましたが、金融政策の大胆な見直しを掲げられて、2%の物価目標も2年を目途に達成できると発言されております。黒田新総裁に対する期待や2%目標の実現可能性についてどのようにお考えかお聞かせいただきたい。
答:
 黒田新総裁が誕生したということですが、引き続き、政府・日銀が協調して、デフレ脱却に向けて、成長期待、インフレ期待を高めて、日本経済を持続的な成長戦略に乗せていくことを期待したいと思います。ただ、いわゆるアベノミクスの3本の矢、金融政策を含めて、3本合わせて大きな相乗効果を生むということだろうと思います。したがって、民間投資を喚起する成長戦略も重要だと思います。民間企業が新たな成長分野へ向け行動を起こす、それを資金面などで我々民間金融機関がサポートする。政府・日銀だけではなくて、我々民間金融機関も各々が役割を果たして、協同、協調してデフレ脱却していく。持続的成長に向けて力を合わせることだと思っています。
 それから、2年で2%の物価目標が実現可能かということですが、可能かどうかということは、わかりません。景気の「景」は景色の景で形があるもの、「気」は気分の気ということで、形のないものと言われますが、「気」の部分が改善されているのは事実だと思います。これは、金融政策を含めたアベノミクスへの期待ということで改善されているので、今後、「景」の部分、先程申し上げた成長戦略も含めた形の部分が実際に政策として打たれて、それが実体経済にどのように反映されていくかということだと思っています。

公的資金の返済について

問:
 三井住友トラスト・ホールディングスが先日、長年の懸案であった公的資金を完済したことに関連して伺いたい。これまで、公的資金の返済のネックは株価の低迷であったと思うが、ここにきて、株価が上昇した要因をどう分析しているか伺いたい。また、公的資金を完済した後の経営戦略についてどのように考えているか伺いたい。
答:
 公的資金については、過去の難局においてご支援いただいたことを改めて感謝しております。また、極力早期に返済することが我々の目標、課題でありました。今回、それが達成できたことは、率直に良かったと思っております。しかし、仰られたように、株式相場全体の上昇に後押しされた面もあるので、我々としては、決して気を緩めることなく、商品・サービスの開発に努めて、具体的な成果、実績を通じて、お客様や市場から評価を得られるよう全力で取り組みたいと思います。
 株価上昇要因について申しあげると、基本的には相場全体が上昇したということでありますが、最近の株式相場上昇については、おそらく、いわゆるアベノミクスへの期待から、これまでかなり過小評価されていた日本株全体が、過小評価からの修正局面に入ったということだと思います。そういう意味では、アベノミクスへの期待が株価上昇のきっかけになったのであろうと思います。今後については、実際の政策がうたれて、成長が図られるということが一番重要なところだと思います。
 当社の経営戦略について、基本的な戦略に変更はありません。当社は、昨年4月1日に傘下銀行を統合しておりますので、顧客基盤や経営資源が大きく拡大しております。したがって、収益・コスト両面で、最大限シナジー効果が発現できるよう注力していきたいと思います。

教育資金贈与信託について

問:
 教育資金贈与信託について、御社としてはいつごろ商品を出されるご予定か。
答:
 法案の成立が大前提であり、その上で政省令等の内容を確認する、契約書の雛形を作る、管理事務の体制を整備する、といったようなことが商品提供までに必要だと思います。したがって、色々な要因があるので確定的には言えませんが、もしこれらの措置が3月末までに固まれば、4月早々には提供したいと考えています。
問:
 教育資金贈与信託について、利用できる最低金額や手数料はまだ決まっていないと思うが、今のところ個社としてどのように考えているか。
答:
 商品の具体的な枠組みを今、急ピッチで詰めているところですが、まだお答えできる状況にはありません。
問:
 教育資金贈与信託について、かなり多くの問い合わせがあるとのことだが、どの程度か。
答:
 手元に件数を持っていませんが、信託協会や信託各社にもかなりの照会があると聞いております。おそらく信託銀行の新商品としては、久しぶりに大きな反響がある商品ではないかと考えています。

長期金利について

問:
 今日、長期金利が9年9ヶ月ぶりに0.58%まで下がってきたが、アベノミクスによって、長期金利は低い水準が続きそうだという指摘もある。信託業界としては、そのメリット・デメリットをどのように捉えているか。また、長期金利の見通しについてはどのように考えているか、答えられる範囲で教えていただきたい。
答:
 長期金利の変動について言うと、信託銀行は、おそらく一般の商業銀行より影響が少ないと思います。それ程多くの国債を保有しているわけではないので、国債の価値が上がる、下がるということによる影響は相対的に小さいと思われます。
 また、一般的に言えば、貸出業務については、金利が低下すると利ざやが縮小することになると思いますが、現在でもかなり低い水準になっているので、今後、それ程大きな影響があるとは思っていません。
 長期金利の低下傾向がどこまで続くかということについては、どのような格好で金融緩和が打ち出されるかにもよると思われますが、金利についてはおそらく当面の間は低い水準で続くのではないかと思います。

以上

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