若林会長定例記者会見

平成25年10月17日

冒頭、上野専務理事より、教育資金贈与信託の本年9月末の受託状況、信託財産総額が本年8月末現在で812.9兆円と過去最高水準となったこと、本日開催された理事会において、「規制改革に関する提案」をとりまとめ、内閣府規制改革推進室宛てに提出したことなどの説明を行った。

半年を振り返り

信託協会長の若林です。
  本日はどうぞよろしくお願いいたします。
  まず、冒頭に一言申しあげます。
  この度発生いたしました台風26号においては、関東地方を中心に大きな被害が発生いたしました。 特に、伊豆大島における被害は甚大であり、只今この瞬間においても行方不明になっている方々の懸命の救助活動などが行われております。 お亡くなりになられた方々に心よりお悔やみ申し上げ、被災された方々には心よりお見舞い申し上げますとともに、行方不明となっておられる方々の早期発見、被災地域の早期復旧を心よりお祈り申し上げます。 当協会の社員会社各社においては、通帳や印鑑等を紛失された方々への対応など、金融上の措置を適切に講じ、金融機関としての社会的責務をしっかりと果たしていく所存でございます。
  それでは、会長就任後の半年を振り返り、これまでの活動状況と今後の取り組みについて申し上げます。
  4月の就任にあたり、まず所信の1点目として、信託の機能を最大限活用して、社会や経済の発展に一層貢献していきたい、と申し上げました。
  その一つの事例が、平成25年度の税制改正で措置され、この4月から信託各社で順次取り扱いを開始しました「教育資金贈与信託」です。
  お客様の反響は大きく、先ほどご報告申し上げました通り、ご契約件数は順調に伸びております。
  この商品は信託業界としては久しぶりのヒット商品となっておりますが、単に契約件数や金額が伸びているだけではなく、 営業の現場ではお孫さんの将来を想う祖父母の方々の、心のこもったメッセージが多数寄せられているという状況であります。
  この極めて信託らしい商品が、これほどまでにお客様にご支持いただけたことで、信託という仕組みは工夫次第でもっともっと社会に 貢献していける、という認識を改めて新たにしたところでございます。
  平成26年度の税制改正では、新規の主要要望として、 「個人投資家のインフラ投資を促進するための信託」と「少子化問題に対応するための信託」について、 税制措置を要望しております。
  いずれも、高齢者を中心に個人が抱える金融資産を、信託の器を使って社会インフラの整備や少子化問題といった、 わが国の課題解決に活用していきたいという提案であります。
  前者の、「個人投資家のインフラ投資を促進するための信託」の方は、太陽光パネルなどの再生可能エネルギ−設備を、 子や孫に贈与する場合に税を優遇する、いわゆる「緑の贈与制度」として環境省と金融庁の要望に取り上げられました。 実現に向けて引き続き活動してまいりたいと思います。
  後者の、「少子化問題に対応するための信託」は、子や孫の出産や子育てに関する費用を祖父母や親が援助しやすくすることで、経済面で 少子化問題の解消を支援していくものです。
  これは少子高齢化という社会的な課題に資する、信託らしい提案と考えており、信託協会としても引き続き検討を深めていきたいと思い ます。
  また、来年3月に租税特別措置法の期限切れを迎える「企業年金の特別法人税」についても、撤廃をお願いしているところであります。 これについては、公的年金の補完・国民の老後生活の維持・安定を図る、という企業年金に対する社会的要請に鑑み、撤廃の措置を講じていただきたいと考えております。
  なお、税制改正とは別の話になりますが、この10月15日から臨時国会が召集されました。   この国会では、産業競争力強化法案や国家戦略特区法案を始めとして、 成長戦略の実行に向けて重要な審議がされることになっております。私どもとしても、信託の機能を用いて成長戦略に資する提案ができないか、引き続き考えていきたいと思っております。

さて、所信の2点目ですが、受託者責任を強く意識していきたいと申し上げました。
  信託協会では、加盟会社の啓蒙を目的として、信託に造詣の深い学者をお招きして、この10月25日に受託者責任に関する信託セミナーを開催 する予定であります。
  そのほか、海外の最新の事例を調査研究するなど、引き続き受託者責任にこだわった活動に取り組んでまいります。

こちらからの報告は以上です。残された半年につきましても、ふたつの所信を意識して活動してまいりたいと存じますので、引き続き、ご理解、ご支援をいただきますようよろしくお願い申し上げます。

以下、質疑応答

反社会的勢力

問:
 みずほ銀行が金融庁から業務改善命令を受けたことを契機に金融機関と反社会的勢力の取引が社会的にクローズアップされているが、信託銀行等の金融機関が反社会的勢力と取引することについて、どのようにお考えかお伺いしたい。
答:
 反社会的勢力との取引排除、関係遮断等ということに関するこれまでの信託協会での取り組みでありますが、協会には、加盟する各社が遵守すべき倫理綱領というものを定めております。ここで「反社会的勢力とは断固として対決すべき」ということを謳っております。また、契約に織り込むべき暴力団排除条項の具体的な参考例等も加盟各社には示しております。協会の加盟各社はこれらを参考にして、それぞれ反社会的勢力の排除について真摯に取り組んできているところです。信託業界をはじめ銀行業界全体が、同様の取り組みを進めてきたものと思いますが、私個人といたしましても、そういった取り組みをより一層進めて行きたいと考えております。そのような中で、今回のような問題が起きてしまったことは、大変残念なことだと考えます。再発防止に向けて、信託業界のみならず、銀行業界全体で真剣に考える必要があると認識しております。具体的な施策については、現在、全銀協にて検討中ということでありますが、信託協会といたしましても、全銀協と連携を密にして今後打ち出される方針に沿って適切に対応を進めて参りたいと考えております。

米国債務上限引上げ問題

問:
 先程ですが、米国で債務上限引上げ問題が決着したのですが、このことについて金融機関の受け止め方をお伺いしたい。
答:
 決着を受けて、米国市場・日本市場共に、非常に良い反応・良い受け止め方をしていると理解しております。ここに来て世界経済の牽引役と言われていた新興国の成長の速度が鈍化してきておりますが、そうした中で、やはり米国経済が世界経済の下支えになるということが共通の認識となってきておりました。債務問題を契機に米国経済に対する信頼が揺らぐということは、世界経済にとっても非常によろしくないと考えておりましたので、今回の暫定案が上下院で可決されたということについては、非常にポジティブな受け止め方をしております。
問:
 2月までの暫定案であるが。
答:
 これからまたいろいろな議論がなされていくと思いますが、とりあえず暫定措置ではあるものの、2月まで延期されたということで、米国の意思として何としてもデフォルトを回避する、世界経済の礎である米国経済への信頼の失墜は防がなければならないという最後のぎりぎりのところで今回の妥決に至ったと思っています。2月につきましても、これから鋭意協議が重ねられ、より良い方向に向かっていくよう期待しております。

AIJ問題

問:
 AIJの判決が近づいている。金融庁からも再発防止策が出されているが、防止策について一言お願いしたい。
答:
 協会でも、AIJ問題発覚以降、受託者たる信託業界として、さらにどういった対応ができるかということを鋭意協議してきました。AIJの判決自体ということよりも、その中で、我々としては色々なデータの照合などをやって行こうとしております。

教育資金贈与信託

問:
 教育資金贈与信託は一本調子に契約数を伸ばしているが、今後のトレンドについて伺いたい。また、この取り組みが信託銀行全体の収益に結びついているのか伺いたい。
答:
 まず、この商品は本年4月からの発売ですが、反響は想定以上であり、現在も引き続き同じような反響が続いております。3年間の時限立法ということですので、私どもは引き続き強含みの反応をいただけるのではないかと思っております。2つ目のご質問ですが、教育資金贈与信託単体の商品として捉えますと、お預かりした後の支払いを非課税にするための照合・突合の作業など大変手間のかかる事務作業が控えており、ご契約を多くいただくほど、その先の事務負担も非常に大きくなります。コストの分解の仕方にもよりますが、単体商品としてはさほど儲かる、あるいは赤字になる商品かもしれませんが、トータルのお取引の拡大の可能性ということを考えれば、信託銀行の顧客基盤は高齢者が中心ですので、世代を引き継いでお取引をいただくことに、信託銀行としては顧客基盤の維持という観点から大変意味のある商品だと考えております。単純にこの商品だけの採算と捉えていないことをご理解いただきたいと思います。

景況感

問:
 景気がよいと言われているが、企業の設備投資などの資金需要や今後の見通しについて伺いたい。
答:
 そんなに大きく伸びているという実感はないが、国内については、ただ右肩下がりになっているわけではなく横ばいから微増だと思います。一方で、日本企業の海外における資金需要は引き続き強いものがありますので、トータルで言えば、国内横ばい、海外増加と言えると思います。

反社会的勢力

問:
 提携ローンについて、信販会社と信託銀行との関係についてのお考えを伺いたい。
答:
 信託銀行も、類似の提携ローンを商品として扱っています。これについては、まず信販会社からの照会を受けて、その後に、反社会的勢力かどうかのチェックを行っています。個社で申しますと、債務者が明らかになった時点で、私どもでチェックをかけて、適切な対応を行っています。
問:
 事後チェックになると思うので、一時的に反社会的勢力への与信が入ってしまう可能性もあるということか。
答:
 可能性はありますが、債務者がつまびらかになった時点で、私どものデータベースでチェックし、そこで反社会的勢力と判明したものについては、代位弁済という形で対応しています。
問:
 仕組み上の問題というよりも、個社の対応が大事であるということか。。
答:
 そうですね、もうひとつは、提携ローンを実行する前にチェックするということが可能かどうかということを、今回の問題を受けてこれから詰めていかなければならないと思います。
問:
 そこは、全銀協と足並を揃えるということか。今すぐに、各社とか協会でスキームの見直しなど行うのか。
答:
 今回のケースで言えば、今朝の新聞で報道されておりましたが、本日、全銀協の会長会見でご説明があると思っています。仮に、全銀協のデータベースを信販会社にも開放されるということになれば、全銀協ベースで、社会として反社会的勢力との関係遮断をどう取り組むかということを考えていくのが良いのではないかと思います。
問:
 IMF総会に出席された際、海外の方からみずほ銀行の問題、日本の反社会的勢力との問題について、関心があったか。
答:
 私がお会いした限りでは、その話題は出ませんでした。

金融政策の評価と課題

問:
 日銀の異次元緩和が始まって6か月が経過したが半年間の金融政策について、評価と課題を伺いたい。
答:
 異次元緩和という金融政策については、デフレ脱却への期待感ということがあります。教育資金贈与信託もなぜこの発想に至ったかというと、旧三菱信託銀行が、平成17年度に会長会社であったときに税制改正要望を行ったのが最初でした。その背景には、デフレ環境の中で、給与は右肩下がりとなる一方、教育費は横ばいで、家計における教育費の負担感が年々重くなってきておりました。親や祖父母として、子や孫を援助したいとの声をたくさんいただいていたことから税制改正要望に盛り込んだ経緯があります。その頃から、10年とも20年とも言われているデフレから脱却できるとの期待感が膨らんできたという効果は、大きかったのではないかと思います。
問:
 課題としてはどうか。
答:
 デフレ脱却の期待感を、金融政策1本あるいは財政政策との2本だけではなく、まさに3本目の矢ということで、成長戦略でどういったアイデアを打ち出すかだと思います。信託銀行としては、この教育資金贈与信託についても、資産の世代間移転を促して、教育費という費目に消費を創出していることでありますから、消費を活性化することによって、経済の浮揚効果を狙うというような成長戦略の部分をいかにこれから打ち出していけるかということだろうと思っています。

反社会的勢力

問:
 三菱UFJ信託銀行としては、現在、反社会的勢力向け融資、残高はあるのか。
答:
 ございません。

以上

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